テレビや携帯電話、そしてゲームにインターネット。情報があふれ、何かと関心をひくツールが多い今の時代、なにかひとつのことに集中するのは大人でも難しいですね。今回は、そんな状況における子どもたちの集中力についての特集です。1面では教育現場での取り組みを紹介、2面では読者アンケートの声をもとに各分野の専門家に話を聞きました。
「あめんぼあかいなアイウエオ」。はきはきした元気な声が響きわたるのは、久世西小学校の4年1組。子どもたちはみんな立ち上がり肩幅くらいに足を広げ、前方をまっすぐ見て発声練習をしています。
これは同小学校で取り組んでいる「モジュール」でのひとこま。午前8時40分から5分間行われています。
「モジュールは、全国各地の学校で取り入れられているもので、授業開始前の短時間に、発声練習をしたり、計算ドリルをしたり、内容はさまざまです」と校長の北田祐二さん。
同校では3年前から始まっているこの時間。どんな役割が?
「子どもたちはそれぞれ違った環境の家庭から登校してきますから、“みんなで集中して勉強する”雰囲気に切り替えることが必要です。この5分間で脳を活性化させ、学習に向かう流れを作るのが目的です」(北田さん)
次々といろいろな詩を読み上げながらテンポを速めたり、2グループに分かれてワンフレーズずつ呼びかけるように読んだり。担任教諭の藤本学さんが、変化をつけつつ、みんなをリード。子どもたちはだんだんとリズムにのってきて、生き生きとしてきました。
「どの子どもも取り組みやすく、楽しんでできるように工夫しています。モジュールをする前に比べると、学習意欲が高くなり、1時間目から活発に発言するようになるなど、授業に打ち込みやすくなったように感じます」と藤本さん。
同小学校では現在2年生以上でこの発声練習を実施。1年生は夏休み明けから始まる予定です。
「集団の意識が育たず、気持ちがバラバラでは、クラスで何かに集中して取り組むことはできません。このように、単純な作業を全員ですることでまとまりが生まれ、集中できる環境や雰囲気づくりにつながると考えています」(北田さん)
最近は塾に通う子どもも多いですね。では、ここでの子どもたちの様子はどうでしょうか?
小中高校生を対象にした学習塾「あすなろ会」などを運営する「創学社」部長・松井一晃さんに聞くと、「親ごさんの中には、『うちの子は集中力がない』と心配される方がおられますが、私はそうは思いません。子どもたちは大人以上に集中力を持っているけれど、その使い方が未熟なだけなんです。たとえば、野球が好きな子どもは、無我夢中で素振りの練習をしたりしますよね。これは大人にはなかなかまねできないことです」
その集中力、勉強にも使ってほしいと思うのが親心です。
「勉強に集中できるかは、目標の有無で異なります。将来の夢、入りたい大学・高校と、目標設定を逆算していくと、“次のテストで何点アップを目指そう”と、今必要なことを生徒たちに理解してもらいやすいんです。理解すると、おのずと集中して勉強するように。ただ“勉強しろ!”というだけではやれませんよね(笑)。それから、勉強に集中するには習慣が大切です。家でも毎日何時から何時までは宿題をするというように、決めるといいと思います」(松井さん)