いざというとき安心で、なおかつ個人の生活やプライバシーを縛りすぎない 「地域のきずな」って? 三者三様の取り組みを行う地域協議会やマンション自治会に話を聞きました。
“義務”じゃない、参加したくなるような仕掛けを
長七小校区地域コミュニティ連絡協議会町内会や自治会の役を負担に感じ、脱退する人も少なくない昨今。そんな中で、もし事故や災害が起こったら、隣近所で助け合えるでしょうか?
この問いに一つの答えをくれたのは、長七小校区地域コミュニティ連絡協議会です。
「これからは、町内会や自治会に入っていない人も、地域の人とつながれる機会をつくることが大切。長岡京市では、平成22年から『地域コミュニティ協議会』というものを、町内会や自治会とは別に小学校区単位で設けています」と同協議会会長の多田良さん。
同協議会では、これまでは地域で個別に活動していた団体(自治会、社会体育振興団体、老人会、ボランティア団体など)同士が連携できるよう取りまとめ、催しなどを企画しています。たとえば、昨年秋に行ったスポーツフェスティバルは、この地域で昔から盛んだった体育活動を発展させたもので、子どもからお年寄りまでが集まったとか。これらの活動拠点としては小学校の体育館や調理室などの施設が開放されています。
そして、協議会のメンバーが口をそろえて言うのは、催しへの参加は強制しないということ。
「ルールで縛ると、そこからあふれる人が必ず出ます。自分から『行きたい』と思えるようなイベントを企画して、参加者同士が『同じ校区の仲間なんだ』という意識を持ってもらうのが目標。そうすれば、万が一のとき、助け合える関係が生まれると思います」と事務局長の鈴木勉さん。どんな人も分け隔てなく受け入れる仕掛けというのが、いいですね。
マンションの中に、多彩な交流の場
ファミール伏見管理組合一戸建ての住宅に比べて、住民同士が接する機会は少ないと思われがちなマンション。しかし、伏見区深草出羽屋敷町の「ファミール伏見」は「1972年の入居以来、住民同士の結びつきが強いのが自慢」と、管理組合理事長の田村邦夫さんは胸を張ります。では、その秘訣(ひけつ)とは何でしょう?
「一つは、自治会と管理組合を一体として住民が運営していること。補修工事なども管理会社に任せきりにせず、住民の意見を反映させるようにしています」と田村さん。
そして、もう一つの特徴はサークル活動。マンション内にある「コミュニティサロン」では、卓球、絵手紙、体操といった趣味の活動や、中学生以下の子どもがいる人同士が集える「なかよし会」などが行われています。高齢者や小さな子どものいる人にとっては、離れた所まで足を運ばなくてもいいのが魅力ですね。
これらを通じて住民同士が互いの顔を知る関係にある一方、自治会には悩みもあるとか。
「若い住民の方々は、夏祭りなどではよく手伝ってくれていますが、年間を通してのいろいろな役割は、主に年配者がしているのも現実。働き盛りで地域に関わる時間が限られている人たちにも自治会運営の全体像を知ってもらえるようにすることが課題です」
大学との連携で、より強いきずなが多彩な交流の場
成逸住民福祉協議会「この街には、生まれてからずっと住み続けている人が多く、近所付き合いも活発です」と話すのは、京都市上京区・成逸(せいいつ)学区にある「成逸住民福祉協議会」会長の小森裕さん。
そのため、夏祭りなどの行事も盛んだとか。それなら、もし何かが起こったときも団結力を発揮できそうですね!
「確かに、住民同士が顔を知っているのはいいことです。でも、いざ災害が起こったとき、行政や国から支援が来るまでの数日間を地域で乗り切れるかどうかは別問題かもしれません。そこで、協議会では、避難所での役割分担や緊急連絡網など、具体的な情報を盛り込んだ『避難所運営マニュアル』の作成に取り組み、今年度も『避難行動マニュアル』と『町内会加入促進パンフ』を作りました」と副会長の川田雄司さん。
ちなみに、これらのマニュアルの作成を提案したのは、元立命館大学産業社会学部講師の石本幸良さん。石本さんはゼミの学生らと地域活動に参加していたのです。
「専門家の視点が加わることで、いいものができました」と小森さん。その後、石本さんはまちづくりの支援組織を立ち上げ、現在も地域活動に参加。協議会は今後も大学をはじめ、街の外の人たちとも連携したまちづくりを目指します。