年度替わりのこの時期は、子どもの学校関係、町内会、会社など、話をする機会が増えますよね。そんなとき、できそうで難しいのが「きちんと話を聞く」ことかも。リビング読者のアンケート結果を交えながら、「聞く力」向上に役立つ話をご紹介します。
リビング読者に、「会話中に『話、聞いてる?』と相手から言われたことがある」か聞いたところ、「よくある」「ときどき」と回答した人は2割弱でした。それは誰しも思い当たるような場面でのこと。「ほかのことをしているときに話しかけられ適当に返事したとき」(ta
mudoku・44歳)、「子どもの話を聞いている最中」(でこちゃん・37歳)、「興味のない話だった」(ゆかりんご・40歳)などです。
しかし、8割の人は、そんなことを言われたことが「ほとんどない」と回答。さらに、「人の話をしっかり聞けている」という自覚は、全員が「いつも」「ときどき」あるとのこと。
一方で「相手が私の話を聞いていない」と思った経験がある人は、60人中55人で約9割。これは、自分では聞けていると思っていても、相手から見たらそうでもないということでは─。
1ページ目ではアンケートに寄せられた、「相手が話を聞いていないと思ったとき」「話を聞いていなくて失敗した」といったエピソードもいくつか紹介します。もしや、あなたも心あたりが…?
自分の話を、相手が聞いていないと感じたとき
相手の目線が、周囲の人や状況を追っていたり、時計を見ていたりする。話半分で、「こうなんでしょ!」と自分の結論を押し付ける(6人の小人・58歳)
ゲームをしながら相づちを打っているとき(マンマミーア・37歳)
何回も「えっ?」と聞き返されたり、ほかのことをしながら話しているとき(けろこ)
返事はしてくれるが、意見を言わない(NK・40歳)
自分が興味のある話には目をらんらんと輝かせていたのに、違う話題になったらしらけた雰囲気に
(ふっち・45歳)
話を聞いていなくて失敗したエピソード
「何回も同じことを言わせて!」と母に怒られた(れいこ・37歳)
自分の苦手な分野の話(政治、経済、保険など)は、頭に入ってこないので、話にならない(ゆかりんご・40)
待ち合わせ場所を間違ってしまった(ちょこっとママサン・50歳)
子どもに頼まれて買いそろえておかないといけなかったものが、準備できなかった(kiyopy・47歳)
先走って話してしまい、相手にいやな思いをさせてしまう(YT・36歳)
会話中に相手から「聞いてないんちゃうの?」と言われたのは、こんなとき
職場の朝礼で聞かずにボォーっとしていた(FM・42歳)
友達との話が盛り上がってしまい、目上の人から「話聞いて!」と言われた(マスクさん・41歳)
子どもがもうすぐ帰ってくるのに、電話の相手の話がなかなか終わらなくて…(NK・40歳)
家事をしていたり、テレビをみていたときに話しかけられて…(KT・44歳)
仕事中に細かな文字を読んでいるときに話しかけてきて…(まあちゃん・45歳)
「聞けていない」のが当たり前?
「自分では話を聞けていると思っていても、客観的には聞けていない」
そう話すのは、京都大学こころの未来研究センター・助教の畑中千紘さん。臨床心理学が専門の畑中さんは、「人は、どのように話を聞いているのか」について調査。その結果は、驚くことに「誰も、きちんと話を聞けていません」。
「話を一言一句間違えずに正確に覚えていても、話す側が伝えたいポイントを聞く側が受け止めていなかったら、聞いてもらったとは感じません。
一般に、聞く側は、頭の中でその話の中から情報を取捨選択し、組み立てなおして理解します。これは、聞くことと同様に自然に行われていて、その自然な行動には癖があります。日常的なものの見方の癖や傾向が、話の聞き方にも表れていると思います」。
家庭や会社、PTA、町内会などシーンによっても「話の聞き方が無意識のうちに使い分けられていると考えられます」。
そこで聞く側にとって大切なのが、「話をある程度は正確に受け止め」つつ「相手の話に関心を向けること」です。
「会話というのは非常に奇跡的なことで、話がズレていてもコミュニケーションとしては成り立つ場合も多いです。試しに、聞いた内容を相手に確認し、自分の聞き方を振り返ってみるのもおもしろいかもしれません」