街をピンクに染める桜シーズンはもうすぐ! 美しい風景に出合ったら、ぜひ写真として残しておきたいですね。そこで京都の桜に詳しい人たちに、おすすめスポットを聞いてみました。2面では、写真家からのアドバイスも。今年のお花見にはぜひ、カメラを持って出かけてみて。
2011年に出版した本「京都さくら探訪」(文藝春秋)のために、京都の桜を1万枚以上自ら撮影したというイラストレーターのナカムラユキさん。たくさん撮ったなかでも「思わず写真に撮りたくなるような、桜は?」との問いに返ってきた答えは「ちょっと“間合い”のある桜」。
見せてくれたのは、花びらが散った石畳が写真の真ん中をすうっと通った雨宝院(1)や、建物の中からガラス越しに見た京都府庁旧本館の中庭の桜(2)。
写真いっぱい桜というのもいいけれど、建物や道などが一緒に存在する景色にひかれるのだとか。「雨宝院は、両側から桜にわっと包まれる感じと、石畳に散った桜がきれいなんです。府庁旧本館の桜は、回廊の中から見ると窓枠が額縁のようになって、桜がキリッと立ち上がって見えるんです。自分なりの視点や切り取り方を持つと、何げない風景がより生き生きと感じられますよ」(ナカムラさん)
京都の旅行企画や京都に関する講座の講師をつとめる「らくたび」の若村亮さん。京都の社寺を歩きまわり、桜の名所は見ごろの時期とともに頭の中にインプットされた、いわばエキスパートです。そんな若村さんが写真におさめたのは、仁和寺の御室桜。遅咲きの桜として知られていますね。
“遅い”だけでなく、“低い”ことも特徴と、若村さん。「地下に粘土層があるため、根が深く張りにくく、桜も約2~3mほどにしかなりません」。
そんな桜ならではの撮影ポイントがあるそう。「花の位置が低いので、場所によっては、桜に囲まれるようなアングルで五重塔の写真が撮れますよ(3)」
もう一カ所は、西陣の街並みに溶け込んだ地域の神社にひっそりたたずむ桜。
「近隣の人たちに愛されている地域の寺社には、観光スポットとは違った風情があります」と、紹介してくれたのは、水火天満宮(4)。紅しだれの下に、桜の時期には毛氈(もうせん)を敷いた縁台が置かれます。桜の色と赤が際立つ美しい光景を思わずパチリ。