既存のスペースを“居場所”として生かす─。そんな2つの活動を紹介しましょう。
今年3月のある日、小学生たちが学校帰りに京都三条会商店街(京都市中京区)にあるカフェ「サラサ3」を訪れました。注文はせず、宿題をしたり、マンガを読んだり…。
これは「コミレスネットワーク京都」の活動のひとこま。コミレスとは「コミュニティ・レストラン」の略で、NPO研修・情報センター(代表理事/世古一穂さん)が推進する「食」を核にしたコミュニティー支援のNPOの起業モデル。全国に拠点があり、京都では2011年秋から活動を始めています。
同ネットワーク京都の世話人・齋藤佳津子さんは、3人の子どもを育てるお母さん。「子どもたちが安心して放課後を過ごす場所を」との思いで、カフェやレストランの空間の一部を活用するモデル事業を3月から4回、実験的に行いました。
今回の試みは、「子どもたちが親以外の大人と交流を持ち、大人の仕事場で過ごすことで、子どもも現場の大人もとてもいい刺激になった」とのこと。
参加した子どもに感想を聞くと、「仕事をするって大変なんだね」「大学生になったら、ここでアルバイトをしてみたい」という答えが返ってきたとか。一方、カフェのスタッフからは「子どもとの会話を通じて、子育てに興味が湧いた」という声が。
日常生活ではなかなか交流を持つことがない世代同士、新鮮な時間になったようです。
会場となった「サラサ3」を経営する大塚章寿さんは、「仕事の内容やお客さまの様子に興味を持つ子どもの姿を見て、『小さな職業体験』のような活動で、おもしろい事業だと思いました」と話してくれました。
「私たちは、子どもの世話をするプロではありません。しかし専門外だからこそ、保育の常識にとらわれすぎない自由な発想で、子どもたちが楽しめる場をつくっていけるのかもしれません」
現在、同団体は今後の定期的な活動に向け、「サラサ」グループの店舗を含め、新しい空間づくりの準備をすすめています。将来的には、3~5年以内に、京都市内各区に1カ所ずつ、同活動に取り組むお店をつくりたいという目標があるそうです。
問い合わせは齋藤さん=TEL:090(8236)8521=へ。
親子の交流・子育て支援・高齢者支援などの場として運営されている地域交流型レストラン「リオス槇島」。今年4月から、「子どもが安心する場所」の提供を始めました。
対象は、小学校3年生から6年生まで。活動時間は、登校日の放課後から午後7時30分まで。レストラン営業は午後4時30分までなので、子どもは周りに気兼ねなく、のびのびと過ごせます。おやつと軽食が用意されるので、おなかも満たせるそう。
時間中は、退職教員や大学生、地域ボランティアが子どものそばにつき、遊び相手に。若いスタッフは“お兄さん、お姉さん”といった存在なんですね。ときには、宿題をする子どもたちにアドバイスをすることもあるそうですよ。
「リオス槇島」の林義彦さんは、「地域の人が、ほっとくつろげる場であることを目指しているので、利用条件に当てはまらなくても、まずは相談してください。利用者の要望にできる限り応えていきたい」とのことです。
1カ月の利用料は、おやつ・軽食代込みで1万円。1回1000円で、単発利用もできます。見学は随時OK。
問い合わせはリオス槇島=TEL:0774(66)1849=へ。
小学校の教室など学校施設を活用し、地域の人々・保護者・大学生などが中心に活動する「放課後子ども教室」。子どもたちの「自主的な学び」と「安心・安全な居場所」の充実のため、国の補助を受けて取り組んでいる事業です。
京都市では、全学年を対象にすべての小学校で「放課後まなび教室」という名称で実施されています。京都市教育委員会の岩崎まどかさんは「『放課後まなび教室』は学習を支援する場であるとともに、スタッフを務める地域の方々との交流の場にもなっています。子どもたちは生活圏内に顔見知りの大人が増えることで、地域により愛着を感じますし、スタッフも子どもたちとの会話を楽しんでいます」と語ります。
京都市以外の市町でも、同様の事業が行われています。問い合わせ先は市町によって異なるので、まずは行政の窓口へ。詳しい実施状況や利用方法を教えてもらえます。
保護者が就労等によって昼間留守にしている家庭の児童を対象として、子どもの居場所提供を行っている学童保育。授業を終えた子どもたちが、夕方までの数時間を過ごす場所です。
京都市では3年生までの子どもが利用し、おやつを食べたり、宿題をしたり、友達同士で自由に遊んだり。職員も常駐し、子どもを見守ります。京都市については、学童保育事業のほとんどが、児童館で行われています。学童保育に通う子どもと、児童館に自由来館している子どもが一緒に過ごせるような工夫もされています。