「こんなとき、どうすれば…」に答えます
読者アンケートでは、高齢の親との接し方や、「もしも」のときに備えるには何をすればいいのか、こんなことで悩んでいる、という声も聞かれました。そこで、代表的な声に対して各専門家からアドバイスをもらいました。より良い関係を築くためにも参考にしてみて。
家族や友人などを亡くし、苦しんでいる人をカウンセリングなどを通してサポートする事業を展開している「京都グリーフケア協会」。同協会の副理事長・三上良次さんは、大切なのは「時間を共有すること」と言います。
「『もっと寄り添えば良かった』。大切な人を失った方は、そんな言葉をよく口にされます。それは、一緒に旅行をするとか特別なことだけではなく、ただ一緒にいる、電話をするなど、“同じことをする時間”を持てば良かったということなのだと思います。
そういった時間は、実は子ども側にとっても“心の準備期間”になるんです。一緒にいると、『老けてきたな』『耳が遠くなってきたな』など、親の変化が分かるでしょう? そういった“老い”を受け入れることで、いずれくる別れへの準備ができるのではないでしょうか」
そしてもう一つ。
「『場をつくれば良かった』ということ。
今は核家族化が進み、孫にとってはおじいちゃんやおばあちゃんの存在が薄くなっています。1年の間に電話で数回話しただけということもあるようですね。
そんなときに何が起きるかというと、綿々と受け継がれてきた家系や地域の話が切れ切れになってしまうんです。それらは、学校や塾では学べません。おじいちゃん、おばあちゃんから孫たちへと歴史をつなげるかどうかは、その真ん中の世代の親次第なんです。ぜひ、“かけはし”になってください」
●今は両親がそろって暮らしているのでいいのですが、片方になったときが問題。「施設に申し込みをしている」とは言っていますが、本心は頼りたいようです(6人の小人・57歳)
●将来的には夫の両親の面倒はわが家で見ることになりそうです。私の親の面倒は弟夫婦にまかせると思うので、私と姉はすでに財産放棄をしています(kyoko616)
●夫の母は、もしものときのために「連絡ノート」を作ったと言っています。私の父からは延命治療はせず、できるだけ自宅で過ごしたいという意思を確認済みです(のぎく・46歳)
●自分の親にはある程度のことは聞けますが、夫の親にはなかなか聞けないのが実情です(IA・44歳)
●夫の親とは名義変更も済み、財産整理は片付いています。私の親については、大事な書類の置き場所確認や葬儀代確保はしています(こまぐろ・39歳)
●病気と同様、最近は天災も心配。親には保険の種類などを子どもたちみんなに文書で伝えてもらっています(KT・44歳)
「親が健康なうちに意思確認をしておくべき」とは、公認会計士の杉田徳行さん。チェックしておきたい項目を教えてもらいました。
①病気について
もし介護が必要になったときは、家、施設など、どこでの介護を希望するか。また、意識がなくなったとき、延命治療を望むか望まないかについても確認を。
②葬儀について
どんな葬儀スタイルを希望し、誰に連絡をするか。
「親の友達関係などは意外と把握していないものです。名前だけではなく、連絡先も聞いておきましょう。それから忘れがちなのが遺影。その人らしい一枚を選んでおくのもいいですね」
③お墓について
「特に1人っ子の場合は、将来的にお墓の世話ができるかが問題になります。今は、永代供養や手元供養などさまざまな選択肢があるので相談してみては」
④財産について
何かとトラブルになりがちなのが“お金”のこと。
「必要に応じて司法書士など専門家に依頼する業務のほか、さらに保険などを“もらう”、株券などを“引き継ぐ”、クレジットや携帯電話などを“やめる”という3つの手続きが必要です。大切な書類は、できれば貸し金庫へ。無理であれば置き場所を確認しておきましょう。最近はパソコンに情報を入れておくケースもありますが、パスワードが分からないという声も聞きます。後々困らないようにしておきたいですね。
また、生前贈与をしておくのも、一つの方法です」
─と、確認事項はいくつかありますが、面と向かってはなかなか聞きにくいこともあります。
「例えばセミナーに行くとか、エンディングノートを書くことから始めてはいかがでしょうか。できれば親子一緒に、取り組むのがいいですね」
「同じことを繰り返し話したり、頑固になったり。年のせいと考えがちなのですが、認知症の初期段階という可能性もあります」とは、京都大学医学部附属病院 老年内科の武地一さん。
左の表は、認知症の患者を家族に持つ「認知症の人と家族の会」が、「今考えると、あれが認知症のサインだったかも」という言動をまとめたもの(資料提供/武地さん)。
「まず、周りの人が変化をキャッチすることが大切。いくつか思い当たることがあれば、病院に行くのがおすすめです」
もちろん、認知症ではなく、“老年者の心理の変化”によるものかもしれないと武地さんは話します。
「ある一定の年齢になると、自分の人生を振り返り、満足できる人生だったか、それとも…と考える人も多いものです。また、高齢になると知り合いも減っていき、寂しさを感じることもあります。そのような気持ちに思いを寄せてあげると、繰り返し話す理由や、良い対応方法が見えてくるかもしれません」
もの忘れが ひどい | ●今切ったばかりなのに、電話の相手の名前を忘れる ●同じことを何度も言う・問う・する ●しまい忘れ・置き忘れが増え、いつも探し物をしている ●財布・通帳・衣類などを盗まれたと人を疑う |
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判断・理解力が 衰える | ●料理・片付け・計算・運転などのミスが多くなった ●新しいことが覚えられない ●話のつじつまが合わない ●テレビ番組の内容が理解できなくなった |
時間・場所が わからない | ●約束の日時や場所を間違えるようになった ●慣れた道でも迷うことがある |
人柄が変わる | ●ささいなことで怒りっぽくなった ●周りへの気遣いがなくなり頑固になった ●自分の失敗を人のせいにする ●「このごろ様子がおかしい」と周囲から言われた |
不安感が強い | ●ひとりになると怖がったり寂しがったりする ●外出時、持ち物を何度も確かめる ●「頭が変になった」と本人が訴える |
意欲が なくなる | ●下着を替えず、身だしなみを構わなくなった ●趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなった ●ふさぎ込んで何をするのもおっくうがり、嫌がる |
※以上は「認知症の人と家族の会」会員経験からまとめたもので、医学的な診断基準ではありません