子どもたちの体力や運動能力が低下しているといわれていますが、実際のところどうなのでしょう。今も昔も「運動が苦手」と感じている子どもたちには、運動会などは、おっくうなもの。そこで、子どもたちが夏休みの間に苦手な運動を少しでも克服できるようなアドバイスを専門家にもらいました。
「平成に入ったころから全国的に子どもたちの運動能力は低下傾向にありましたが、ここ2年はデータとしては横ばいです」というのは、京都市教育委員会体育健康教育室・体育課長の森田育孝さん。
1998(平成10)年から全国の小中学生を対象に、8つの種目で行われている「新体力テスト」の結果を見てみると、地域や種目によって得意・不得意があるよう。例えば、京都市の小学校男子の平成23年度の平均値と、22年度の全国平均値を比較すると、「長座体前屈」「50m走」では全国平均値並みかやや上回る結果ですが、他の種目では全国平均値を下回りました。特に「握力」「反復横とび」で、全国平均を大きく下回っています。女子でもよく似た傾向が見られるそう。
「以前に比べてぞうきんを絞ったり、鉄棒にぶら下がったりする機会が減っていることが握力の低下につながっているのかもしれません。運動能力には、生活環境の変化が大きく影響しています」(森田さん)
「運動習慣の“二極化”も問題視されています」と教えてくれたのは、同室指導主事の山口淳さん。「幼いときからスポーツ教室に行ったりして、運動に親しんでいる子がいる一方、ほとんどしない子もいるんです」。文部科学省の調査によると、1週間の総運動時間が60分未満の小学校男子は10・5%、女子は24・2%。そのなかでも、体育の授業以外では運動をしていない、運動時間0分の小学校男子は23・6%、女子は21・9%にのぼります。子どもたちの“運動離れ”も、運動能力の低下に大きく関係しているようです。
では体を動かす機会が少ないと、どういう現象がみられるのでしょうか?
「転んだとき手をつくことができずに、顔を打って歯を折ったり、しりもちをついたときに手首を捻挫したり。ふとしたことが大きなけがにつながるケースが見られます。いろいろな動きを経験して、小さなけがを体で覚えていると、そういうことは少なくなるのですが」(山口さん)
そうはいっても、苦手だと感じているのにいきなりスポーツさせることは運動嫌いを生む恐れも。
森田さんは「子どもの時に大切なのは、運動ができる体の基礎をつくること。自然の中で遊ぶのもいい経験です。想定外のデコボコ道を体で感じると、普段使わない筋肉を使い、多様な動きを身につけられるんです。あとは、早寝早起きをし、食事を1日3回きちんと取ることが、健やかな体づくりの一歩になります」と言います。