ふだんの生活の中で、当たり前のように目にしている“川”。でも、身近にありすぎて、意外と知らないことは多いのでは? 今回は、リビング読者におなじみの「鴨川」「宇治川」「桂川」についてテーマを設けて紹介します。京都の川って、奥深いんですよ。
鴨川の河川敷でくつろいだり、散歩したりする人の姿が近ごろ増えたように思いませんか? これには、平成22年4月スタートの「鴨川公共空間整備基本プラン」という事業がかかわっているようです。
「鴨川を改修するにあたって、ただ治水整備を行うのではなく、利用者の快適さや自然環境に配慮した公共空間も創出するという事業です」と京都府河川課・平田俊也さん。
現在は、賀茂川通学橋(上賀茂)~丸太町橋~高野川にかかる松ケ崎橋の間の河川敷に両岸を周回できる全長17・2キロメートルの遊歩道を整備中。十条通にかかる陶化橋下流などの工事も進められています。
「鴨川は、市街地の自然、公園、観光地などの顔を持つ一方、祇園祭で神輿(みこし)洗いをする神聖な場所でもあるなど、たくさんの役目を持った川です」。こういった面から、“京都のシンボル”の一つといっても過言ではありませんね。
「高度成長期まっただ中の昭和30年代、鴨川の河川敷には畳や家具が捨てられ、川の水は流域の工場や家庭から出る排水で汚染されていました」
そう話すのは、「鴨川を美しくする会」で4代目事務局長を務める杉江貞昭さん。昭和39年11月、汚れた鴨川の姿を見かねた地域住民が、川を美しくしようと同会を設立しました。
会では、クリーンハイクをはじめ、流域の小中学校での環境学習など多岐にわたる活動を展開。
「河川の美化と環境保全は、自分たちの生活とつながっていることを子どもたちに伝えていきたい。鴨川を訪れる一人一人が環境のことを考えてくれるようになったら、このような会の活動は必要なくなるでしょう」
平成22年5〜7月、龍門堰(りゅうもんぜき・伏見区)に行く手を阻まれ遡上(そじょう)できない天然アユの姿を京都市職員の中筋祐司さんが確認しました。
鴨川の水生生物調査を行っていた京都大学防災研究所水資源環境研究センター准教授・竹門康弘さんは、「水生生物にとっての鴨川の環境を考え、その自然の恵みを生かした生活を市民に広めたい」と提案。そこで、学識者、漁業団体(賀茂川漁協、京淀川漁協)、市民団体、府市などが集まり、平成23年5月に「京の川の恵みを活かす会」が結成されました。
天然アユのジャンプ力は約70センチ。せきが高過ぎたり、せき下の水深が浅すぎても上ることはできません。会では、まず、前述の龍門堰に木製のせきを設けて水の流れ方を変え、遡上を助ける魚道を設置。その結果、推計約2万匹が遡上したそう。
今年は、四条大橋下流に竹を使った魚道を設置。竹門さんは、「ぴょんぴょんと天然アユがジャンプして遡上する姿を見ると、うれしくなります」。
鴨川には、もともとオオサンショウウオ(在来種)が生息しています。ところが、食用として持ち込まれた中国産オオサンショウウオが鴨川で野生化し、在来種と交雑。これまでに京都市が行った調査によると、捕獲したオオサンショウウオの約9割が、この交雑種なのだとか。