「頭痛で通院する患者さんの多くは片頭痛で悩む人です。当院に通う片頭痛の人の年齢分布を調べてみたら、最も多いのは男女とも40代でした」と立岡さん。
片頭痛に悩む人は、男女とも30代前後から増え始め、40代をピークに徐々に減少するとか。
「頭痛人口が増加する時期は、仕事や育児などに伴う責任が増え、ストレスのかかる時期と重なります。60〜70代ごろになると楽になるという人が多いですね。でも、それ以降も痛みが続く方もおられます」
生理中に頭が痛くなる女性は多いですね。頭と子宮は離れているのに、なぜこうしたことが起こるのでしょう?
「生理中の腹痛は子宮の収縮によって起こりますが、頭痛の原因は女性ホルモンの低下にあるんです」と立岡さん。
月経中は、プロゲステロンとエストロゲンという2種類の女性ホルモンの分泌量が減少し、それに伴い、脳が痛みを感じる力が強くなるのが原因だそうです。
「片頭痛と月経の関係は深いです。頭痛人口は、10代前半までは男女ほぼ同数なのですが、それ以降は、女性の割合がぐんと増えるんですよ。ちなみに、60〜70代の男女比を調べたら、女性のほうが多いことがわかりました。つまり、残念ながら頭痛は閉経後も慢性化してしまうことがあるのです」
「頭痛薬への頼りすぎは危険。薬を過剰摂取すると、どんどん効きにくくなってきます」と立岡さん。痛みをコントロールする脳の機能が鎮痛薬の飲みすぎで低下する危険性があるのだとか。その結果、頭痛が悪化することを「薬物乱用頭痛」といいます。
「これを防ぐためには、鎮痛薬は月10日以上は飲まないほうがいいですね。1日飲んだら2日は空けるようにしましょう」。とはいえ、頭が痛いのに薬が飲めないのはツライ!
「1面で紹介したストレッチなども参考にしてほしいですし、頭痛専門医のいる病院では、頭痛の原因をカウンセリングしたうえで、痛くなってから飲むとんぷく薬と、痛みの発作を和らげるための予防薬を出し、薬物乱用頭痛にならない飲み方を指導します」
頭痛には欠かせない薬ですが、正しい飲み方を知らないと、かえって頭痛がひどくなる可能性もあるのですね。
「二次性頭痛(1ページ目参照)のように別の病気が原因の場合、その病気が治れば頭痛はなくなりますが、片頭痛などの一次性頭痛は完全になくすことはできません。年を取るにつれ、痛みの度合いが和らいでくる人は多いのですが…」
つまり、いったん頭痛持ちになってしまうと、ほぼ一生のお付き合いになるというわけ。
「だから、どんなときに自分は頭痛になりやすいかといった傾向を知り、そうした状況を避けるように気を付けておくことが大切です。私のおすすめは『頭痛日記』をつけること。いつ、どんなことをしたときに、どれくらいの時間、どんなふうに痛かったか、といった記録を詳細につけてください。そうすると、自分の“傾向と対策”ができますし、病院で薬を処方してもらうときにも重要な手掛かりとなります」
「子どものうちから慢性的な頭痛で悩んでいる人はいます。この場合、大人の一次性頭痛と同様命に別状はありませんが、薬の飲ませすぎには注意してください。それから、発熱を伴う急な頭痛は脳炎などの可能性もあるので、病院で診てもらってください」
ちなみに、子どもの片頭痛は小学校高学年〜中学生ごろに症状が現れることが多いそう。大人の片頭痛とは異なり、夜泣き・下痢・嘔吐(おうと)・腹痛・立ちくらみ・めまい・乗り物酔いといった症状が出るのだとか。
「これらの症状は、病院に連れて行っても『自家中毒』『ストレスに弱い子』『おなかが弱い子』『自律神経失調症』といった診断をされがちですが、実は片頭痛である場合も多い。親御さんのどちらかが頭痛持ちだった場合、その可能性は大きいですね」
くも膜下出血や脳出血など、命にかかわる病気の前兆として起こる頭痛(二次性頭痛)の見分け方について教えてもらいました。ポイントは下の通り。こうした症状が見られたら、脳神経内科などで見てもらいましょう。