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読者が推薦!私の街の“いい女”

京都でも頑張らなきゃ!
みんなで取り組む節電

中小企業でも進む節電の取り組み


自社での経験を生かしたビジネス展開も

松尾製作所

「みんなで節電頑張ってます!」とポーズ。京都営業所のほか右京区の本社、滋賀営業所も併せて30人弱の企業です

室内

手前の、人がいない箇所の電灯は外してあります

電子部品などを扱う商社・松尾製作所(西京区)。06年にKES(下記参照)ステップ2の認証を取得していた同社は、今春、市の省エネ診断を受診して市の助成を受け、同社京都営業所に太陽光発電システムを取り付けました。その発電量は8.92 kWh。日照のいい夏場は、同営業所の電力をほぼまかなえるうえ、売買もできる見通しだそう。
「社内でのクールビズや、昼休みの消灯、一部照明のLED化などは既に数年前から実施していました。今年はさらに、扇風機を使ったり、紙の使用量を減らしたりといった努力も」と同社専務の松尾定信さん。
毎日、電力のほか、ガソリンや紙の使用量削減など5項目についてチェック。社員から不便だという不満の声は出なかったですか?と尋ねると、皆さん意外そうな表情。「それはなかったですねえ」とのことで、意識の高さがうかがえます。「我々エレクトロニクス業界は、もともと環境に配慮している企業が多いんですよ」(京都営業所長・井上武史さん)
「私たちのグループ企業に、LED製品の企画販売や太陽光パネルの取り付け・販売を行うものがあります。今回の経験を生かして、グループで取引のある中小企業さんを対象に、『僕らでもできたんですよ』と太陽光発電システムの提案をしたり、相談を受けたりしていきたい」と、ビジネスにもプラスに働いているようです。

サービスは維持しつつ省エネを実現

エル・スポーツ京都

使っていないスタジオの電灯を消す佐藤さん。「僕たちは年中この格好ですので、クールビズの必要はないのですが(笑)」

平日昼間でも、たくさんの人でにぎわうスポーツクラブ「エル・スポーツ京都」(左京区)。フロアを見回すと、誰もいないスタジオは真っ暗なことに気付きます。こちらも市の省エネ診断を受けてKES認証を得て、市から補助金を受けた企業なのです。
「建物の老朽化に伴い、空調を新しくする必要があったんです。空調は20年ほど前の建築時のままでしたが、新しくするだけで、かなりの電力減になりました」と、マネジャーの佐藤泰生さん。一部の空調や照明を新しく省エネ仕様のものに変えたり、こまめな消灯を心がけたりすることで、前年の60%にまで電力消費が下がっているそう!
ほかにも書類は両面印刷にしたり、社内限定で裏紙を使ったり。「紙の使用料は2割カットできましたね」とのこと。
とはいえ、この習慣が定着するまでには半年ほどを要したのだとか。「常駐の社員は40人ほどですが、週に数回しか来ないインストラクターが30~40人いますので、意識を徹底するのが大変でした。そこで社員の中から省エネ推進委員を1人選定。彼の頑張りが大きかったと思っています」
ただ、こちらはサービス業。「お客さまの満足度を維持することは大前提でした」。それが実現できている証拠に、省エネに取り組んだ後も利用者から不満の声などはないそうですよ。

KESって何?

 中小企業も環境活動に取り組みやすいよう考案された環境経営の仕組みが「KES(KES環境マネジメントシステム・スタンダード)」。97年の京都議定書を機に京都で生まれたシステムです。段階別にステップ1と2が用意されています。
 CO₂削減などができるほか、コストダウンや企業イメージの向上につながるため、全国で取得する企業が増加中。その数は3667件にもなるそう。

KESって何?

手塚哲央さんライフスタイルを転換するきっかけに
習慣づくまではいろいろと面倒な節電。つい「もうイヤ」なんて思ってしまいませんか。節電の意義について、京都大学でエネルギーシステム学を研究する手塚哲央さんに聞きました。
手塚哲央さん
京都大学大学院エネルギー科学研究科 
エネルギー社会・環境科学専攻 エネルギー経済分野教授


いつまで節電すればいいのでしょう
現在のような状況がいつまで続くかは、現段階では不明です。 ただ、エネルギー資源に限りがあるのは間違いないこと。数百年後には石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料は確実に入手が難しくなります。特に資源の少ない日本はどの国よりも真剣に脱化石燃料を考えなければいけません。
数百年後というとずいぶん先のように思うかもしれませんが、京都にも千年以上前の木造建築が残っていますよね。そう考えると、それほど遠い未来ではないはず。そのために、今からできることを考えておくことは悪いこととは思いません。既に節電している人は別として、普段意識せず電気を使っている人は、無理しなくとも少し工夫するだけでかなりの節電ができると思いますよ。

なぜ今節電しないといけないのでしょうか?
今回の関西電力から出された、平日日中の節電要請がずいぶん波紋を広げていますね。企業にとっては節電は売り上げに直接関わることなので、反対意見が出るのも無理はないですが、大停電を避けるためであれば仕方がないですね。家庭では省エネのよい機会ととらえて、電力だけではなくエネルギー全体の使い方を積極的に見直してはどうでしょうか。 近年の急速な原子力指向は、二酸化炭素排出削減の国際約束も一因となっていました。二酸化炭素の増加は非常に大きな気候変動をもたらす可能性があるので、原子力の削減を考える場合でも、同時に二酸化炭素の削減を考える必要があります。その双方をかなえるのは、自然エネルギーの利用と省エネ。でも、自然エネルギーの効果的な大量導入には技術開発も必要で時間がかかるため、今すぐにできることは省エネ、節電ということになります。

今後化石燃料や原子力に頼れないとすると、何に頼ればいいのでしょう
人類が最終的に利用できるエネルギーは太陽光や風力、波力、バイオマスといった太陽起源のエネルギーしかありません。そして化石燃料から太陽エネルギーに移行するのは大変な難問です。
でもそれだけに、新エネルギーの技術開発や化石燃料に頼らない社会の実現では、ぜひ、資源の少ない日本に世界でのリーダーシップをとってほしい。そうすれば、50年後、100年後に日本の明るい未来が待っていると期待できます。

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