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子どもの心は、大人のことばを刻んでいます

大人の何げない一言。子どもはそれを、ときにはうれしい、ときにはつらい記憶として残しているかもしれません。
今回は、リビング読者に「小さいときに言われて、記憶に残っていることばを教えて」とアンケートを実施。心に刻まれた一言を紹介します。「自分の子どもに言ってるかも」「子どもってそんなこと気にしてるの?」と、自分の言動を振り返る機会にしてみては。
臨床心理士であり、子育て支援も行う大谷大学文学部教授の佐賀枝夏文さんのコメントも参考にしてくださいね。

“存在することが大切”という気持ちで、子どもと対話を

 「親と子は、生涯に数え切れないほど対話をします。子どもは、その中のことばからキーワードを見つけて“自分の物語”を作っていきます。親としては、願わくば子どもには幸せな道を歩んでほしいと思うものでしょう。そのためにも、ことばの重みを意識して話をするのがいいと思います。
 ただ、子どもは大切なことをかぎ分ける能力があります。大人は、伝えたいことを懸命に、素朴に話をすれば、子どもは周りと協働できる人になれるのではないでしょうか。
 私が大人の皆さんにお願いしたいのは、子どもたちに『どんなにつらくても悲しくても、あなたが存在することが大事』という気持ちで会話をしてほしいということです。子どもたちには、大人のことばと気持ちを受け止めて、しなやかに生きる“物語”を作っていってほしいのです」

佐賀枝夏文さん
大谷大学 文学部 教授
臨床心理士・佐賀枝夏文さん
これまでに児童指導員、心理判定員としての経験も持つ佐賀枝さん。「こころの取扱い説明書」(三畳間文庫)、「ぼくは いま ここにいる」(東本願寺)などの出版物も多数

ほめられてテンションアップ

  • 小学校4、5年生くらいのとき。ピアノ教室に行くと、先に来ていた若い女性たちが私のことを「あの子かわいいね」と言い、1人は私のことをデッサンし始めました。10代半ばまでで、大人にかわいいと言われたのは、このときだけ。“記憶に残ることば”として、まっさきにこのエピソードが思い浮かぶんだから、よっぽどうれしかったんでしょう(Lucca・38歳)
  • 小学4、5年生のころ、フェルトのマスコット作りが好きで、夜、仕事から帰ってきた母に見せると「上手にできてる!」とほめてくれたこと。フェルトのマスコットを見ると、思い出します(YO・39歳)
  • 4歳のときに腹膜炎で入院し、毎日太い注射を打ってもらっていましたが、看護師さんに「4歳で泣かない子って初めて」とほめられました。なんだかうれしかった(みーぬ)
  • 母親が友達のお母さんに、私のことを「よくお手伝いしてくれて助かる」と言ったとき、かなりうれしかった。自分自身のヤル気度がアップしました(こまぐろ・38歳)
佐賀枝さんから
大人は子どもの“良いところ”に焦点を合わせて声をかけるのがいいですね

将来にも影響!?

  • 「文章が上手やから作家になったらいいねん。未来の吉本ばななやなぁ」と小学生のとき、叔父にほめられました。半分誇張だったのかもしれませんが、そのことばは私にとって自信になりました。そのおかげで、作文コンクールで受賞したり、今も在宅でエッセーを書く仕事を少ししています(すずらん・35歳)
  • 私が中学生のとき、働いていた母が帰ってくるまでに台所の片付けをしておいたところ、「あなたがいてくれて助かる。ごはんの準備がしやすい」と話してくれた。台所仕事が好きになるきっかけになりました(ぱりちゃん・38歳)
  • 小学3、4年生のころ、学校からアンケートがきました。項目の一つには、「あなたの子どもは友達に対してどんな態度ですか」という質問が。それに、母が「あんたは友達思いで友達にすごく親切やしなぁ」とつぶやきながら答えていました。そんなふうに見ていてくれていることを知らなかったのと、自分ではそれほど優しいとは思ってはいなかったため、うれしくて、それからは意識して人に優しく、親切にと心がけるようになりました(りのあやママ・50歳)
  • 小学生のとき、友達の悪いうわさ話を母にしたら、「人の悪口やうわさ話は絶対にしてはだめ」と言われました。それ以来、言うことはなくなりましたし、聞かされても、うなずくだけにとどめるようにしました。そのおかげかどうかは分かりませんが、友人からはよく相談を持ちかけられるようになりました(マツイママ・48歳)
佐賀枝さんから
子どもに“芽生えた”すてきなことに、そっと言葉を添えるときっと花が咲きますよ

信じてもらえず…

  • 中学生のころ、おなかの調子が悪くて近所の医者へ行ったが、「ちょっと痛いとすぐ来る」とぼやかれました。嘘つき呼ばわりをされたようで、すごく傷つきました。今も医者に行くときは、「行ってもいいのかな?」と思ってしまう(MT・40歳)
  • 小学校のとき、私が友達の悪口を言ったと、別の友達に言われました。全く言っていないのに信じてもらえず、「謝りなさい」と言われたことが忘れられません(マンマ・ミーア・35歳)
佐賀枝さんから
子どもだからってあなどってはいけません。しっかりと“おとな”を見ています

生きるパワー

  • 中学時代、いじめにあっていた私。泣いて暴れて、「もう死にたい!」と叫んでいたとき、母が私を抱きしめながら「お母さんがいるから! 何があってもお母さんだけはあなたの味方よ!」と言ってくれたことは、私に「一人じゃない」という生きる力を与えてくれました(まみこ・30歳)
佐賀枝さんから
しっかり、ガッチリ伝えるべきことは…、あなたの応援団長は“わ・た・し”です

大人になってみると

  • 小学生のとき、父親に「女の子は勉強はできなくてもいい」と言われました。そのときは、そんなものかと思いましたが、大人になって「そんなことはない。知識はあればあるほど、人生が豊かになる」と事あるごとに思います(みっち・54歳)
  • 幼稚園のころから、3つ上の姉と私は競争させられて育ちました。ごはんを食べるのも、宿題をするのも、走るのも、母は「どっちが早いかな? よーい、ドン!」と掛け声。雑でもなんでも、「早い=良い」という考えが私の中に入りました。大きくなってからは間違っていると気付きましたが、今でも、つい「早くする」癖が出てしまうことも(KT・43歳)
佐賀枝さんから
“子ども”はお手軽に操作できて、ごまかせるものと考えてはいけませんよ

良かれと思って…

  • 幼稚園のころ。自分で前髪を切って祖母に見せたところ、言われたのは「アホなことして」という一言。ほめられると思っていたので、すごく傷つきました。時をへて、私の娘が2歳半のときのこと。同じように前髪を切ってしまったのですが、「かわいく切れたやん! でも、危ないからこれからはママと一緒に切ろうね」と言いました(ラッキー・38歳)
  • 5歳のとき、母親に「おせっかい!」と言われました(何をしてかは覚えていません)。今でも、誰かに何かをしてあげたいと思っても、この「おせっかい」ということばが頭に浮かび、二の足を踏んでしまいます。そんな記憶があるので、子どもが何かしてくれたときは、まずは「ありがとう」と言うようにしています(KS・42歳)
  • 小学校4年生か5年生のとき、母が買い物をして帰ってきたので片付けを手伝おうと思って、卵を冷蔵庫に入れようとしましたが、手がすべって割ってしまいました。こちらの話を一切聞かず、いきなり「何してんの!」と怒鳴られました。それ以降、何があっても一切、家事は手伝わなくなりました。
    ただ、反面教師で自分の子どもには、そういう行動はしないように心掛けて接していました(ひろ・50歳)
  • 小学校低学年のとき、母の誕生日に、おこづかいでカランコエの鉢植えをプレゼントしました。喜んでくれると思ったのに、返ってきたことばは「こんなんいらんのに」。ショックすぎて泣くこともできませんでしたが、その後、母が「ごめんね、さっき。ありがとう」と言ってくれたことで救われました。何も言われないままなら、母親不信になっていたかも(YI・30歳)
佐賀枝さんから
子どもが何か失敗をしたとき、しつこく責めてはいけません。注意した内容よりも“責められた”という印象が残ってしまいます


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