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読者が推薦!私の街の“いい女”

いろんな人、いろんな取り組みが動いています
京都の木々を守る

京都府の面積の約70%は森だと知っていましたか? そして、都市部には寺社をはじめとした木造建築が多く残っています。そんな木とのつながりが深い街・京都で、木を守る活動をしている人たちに会ってきました。次のページでは、行政の取り組みなども紹介します。


京都の木は大切な“観光資源”

高田研一さん

髙田さんが参加している「京都伝統文化の森推進協議会」では、京都市・寺社・研究者・地元商店街などが一丸となって、東山地区の国有林の保全活動を実施。手入れをした山を案内してもらいました。日光をさえぎり、ほかの植物の生育を妨げていたシイの伐採をしたそうです

「京都の森が荒れると景観にも影響が出ます。すると、観光収入が低下し、経済に影響を及ぼす恐れだってあるんです」

そう話す髙田研一さんは、森林保全に関するNPOの活動に携わるほか、京都市の木々を守る政策立案にもかかわっています。こうした活動の一環として、獣害で荒れた森に植林もしていますが、その際重視しているのは「京都らしい森をつくること」。あらゆる土地には、その状態に合う種類の木が、その状態に合った生え方で育ち、景観がつくられるのだと言います。

「いま、京都をはじめ各地では、人間の都合で森の形を変えてきたために、地域の生態系が崩れ、土砂災害などを引き起こしているところもあります」と髙田さん。その土地に合った森林をつくることは、観光・防災の両面で重要なんですね。

「この地域でしか見られない景観をつくりたい。そうした森の在り方を京都から示したいですね」

家具作りに木工教室…さあ、木に親しんで!

金辻進さん

木工品のほか、食品なども販売されている、平野神社(北区)の市(毎月25日午前8時30分~午後2時開催)を訪ねました。金辻さんたちは、毎週日曜日に、周山街道へ続く国道162号線沿いの「京都北山丸太生産協同組合広場」で「北山の朝市」も行っています

「昔は、床柱(とこばしら)に使う北山杉の丸太が、高いものなら300万くらいで売れていたころもあったけど、今はあかんなぁ…」と金辻(きんつじ)進さん。約40年、北山杉の育林のほか、磨き丸太への加工、丸太の販売も行ってきました。

昔から日本家屋の床柱などに用いられてきた北山杉ですが、近年は住居の欧米化に伴い需要は激減。仕事の中心を、家具や木工品の作製・販売に切り替えたと言います。

「いま国は林業を活性化させようとしてるけど、簡単ではないと思います。木は、木材として使えるようになるまで30~40年はかかる。でも今は、何でもすぐ結果が出ることが喜ばれる時代でしょ? そういうところから変わらんと、難しいんちゃうかなぁ」

そんな金辻さんですが、「自分にできることを通じて、いろんな人に木に親しんでもらいたい」と、さまざまな活動をしています。一つは、同業者の仲間と続けてきた「朝市」。

このほか、京都市北区役所に置くベンチを作ったり、区のお祭りで木工教室を行ったり。地域とのつながりを通して、京都の街に木を愛する人を増やしているのです。

60年続く研究所いったいどんなところ?

鳥居厚志さん

「これは、孟宗竹(モウソウチク)。いま、西日本各地の里山地域で、雑木林や畑などを侵食しています。1年で10m近くにまで育つので、高齢者には手入れが難しいんです」と鳥居さん

入場門から続く、メタセコイヤの並木道。京都市伏見区にある「森林総合研究所 関西支所」には、ほかにもさまざまな木が茂っています。

「ここには約200種の木が生えています。竹だけでも40~50種類あるんですよ」と、同研究所の鳥居厚志さん。

つくば市に本所を置く「森林総合研究所」では、日本の森林について、さまざまな角度から研究を実施。その歴史は、つくば市の本所が100年以上、関西支所も、この地に建てられてから約60年になるそうです。

「設立当初は、戦後、焼け野原になった街に家を建てていくために『よい木材をいかに効率よく作り、供給するか』が重点課題でした。今、関西支所で主に行っているのは、里山の保全と利用や林業の活性化。昨年夏、京都でも話題になったナラ枯れ対策もしました」

研究成果を一般の人が見られる展示室もあるとか(月〜金のみ開館)。見に行ってみませんか?
●近鉄・京阪「丹波橋」駅より徒歩約10分
TEL:075(611)1201
http://www.fsm.affrc.go.jp

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