用途別のハチミツがそろう点がユニークな、ラクエ四条烏丸地下1階の「蜂蜜家 京都かねいち」。中には「パック用」「洗顔用」なども!
「美容目的の商品もハチミツ100%なので、おいしく食べられますよ。ハチミツの種類による効果の違いはそれほどないので、家にあるもので大丈夫です」と店長の市川拓三郎さん。美容や健康面でのハチミツ活用法を教わりました。
二日酔い防止:お酒を飲む前後に。ハチミツの糖分がアルコールの分解を助け、コリンやパントテン酸が肝臓機能を強化します。 安眠効果:牛乳には安眠を促すセロトニンの元となるトリプファンが。これはブドウ糖と一緒にとると吸収を助けるので、ハチミツを加えた牛乳は就寝前におすすめ。 疲労回復:胃に負担をかけず吸収され、即エネルギー源となるので、疲労回復に。また疲労物質がたまると体液が酸性に傾きますが、ハチミツのカリウム、カルシウム、クエン酸などは体内でアルカリ性成分となって調整してくれます。 整腸効果:ハチミツのオリゴ糖とグルコン酸がビフィズス菌を増加させるので、便秘、下痢の防止にも。 |
ビタミン・ミネラルが豊富 栄養素を代謝するのに役立つビタミンB1、B2、B6、ナイアシン、パントテン酸を含みます。また体の調子を整えるカルシウム、マグネシウム、鉄、銅、カリウムなどのミネラルも。 殺菌作用 ハチミツは糖濃度が約80%で浸透圧が高いため、細菌が死滅(赤痢菌約10時間、チフス菌など約48時間)してしまいます。ハチミツは弱酸性なので、繁殖する細菌も少ないです。 またハチミツのグルコン酸には、緑茶に含まれるカテキンのような殺菌作用も。インヒビンという殺菌成分(ただし熱や紫外線に弱い)も報告されています。 |
甘さは同じで砂糖より低いカロリー ハチミツは水分を20%含むので、100gあたり砂糖が384kcalに対し、ハチミツは294kcal。また砂糖より甘いので、使用は砂糖重量の5~7割で十分。したがって、砂糖の代わりに使用するとエネルギーを1/2にカットできます。 糖分が消化によい ハチミツの糖分のほとんどは単糖類のブドウ糖と果糖。砂糖は2糖類、でんぷんは多糖類のため消化吸収に時間がかかりますが、ハチミツは消化の必要がないので、胃への負担をかけず、約20分で吸収されます。 |
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赤ちゃんにハチミツは与えないで! 1歳未満の乳児にハチミツ製品を与えてはいけません(加熱後も不可)。ハチミツには高確率でボツリヌス菌胞子が含まれており、消化管の未発達な乳児がボツリヌス菌中毒を起こし、命にかかわることがあるためです。 アレルギー体質の乳幼児や低栄養で腸管の免疫機能が落ちている人も注意を。 |
ハチミツはどのようにして採れるのかを聞くために、伏見区「ヒグチ養蜂園」の樋口義明さんを訪ねました。
養蜂に携わって42年の樋口さんは、府下で唯一「移動養蜂」を行う養蜂家。移動養蜂とは、花の開花時期に合わせて国内各地を移動する方法です。「巣箱を現地に持って行ってミツバチを放すのです。ハチは帰巣本能があるので、蜜を採った後はちゃんと自分の巣箱に帰ってくるんですよ」
樋口さんは現在、京都と滋賀、長崎を移動して養蜂しています。「京都では4~6月が採蜜期。毎年5月は寝る間も惜しんで、あちこちを移動して採蜜作業に励みます」
農業で大きな役割を果たすミツバチ
「人類は食料の3分の1を植物に依存し、ミツバチはその80%の受粉に関わっているという説もあります。それほどミツバチの役割は大きく、アメリカなど大規模農業を行う国では、養蜂家にとってハチミツはむしろ副産物。人の手で受粉させるよりも良い果実ができるので、日本でもイチゴなどのハウス栽培にミツバチは欠かせません」
近年、「蜂群崩壊症候群」という、ミツバチの原因不明の大量失踪(しっそう)がアメリカなどで話題になりました。「ミツバチの病気のまん延や農薬など、さまざまな原因が考えられます。農業に使うため長距離を移動させられたり、同じ植物ばかり与えられたりと不自然が強いられているため、体力が弱いハチが増えているのです」
生涯で集めるハチミツはたったの6g
働きバチの寿命は羽化してから約40日。1匹が生涯に集める蜜はたったの6gだそう。
一方、女王バチは一群に1匹のみで、ひたすら産卵だけを行います。「女王バチも働きバチも最初は同じメスの卵。ローヤルゼリーという特別食で育てられたものが女王バチに成長します」
働きバチはオスだと思い込んでいた記者はびっくり。「オスは群の3%程度だけ。働きもせず寝て暮らし、メスに口移しでエサをもらって、夏の間は楽な生活を送ります。でもエサが少なくなる晩秋になると巣を追い出され、最後は飢え死にする者も」。何とも哀れなオスの末路…。
また、「花の蜜とハチミツは全く別物。糖濃度50%の薄いショ糖液である花の蜜を、ミツバチが巣の中で水分を蒸発させて80%にまで濃縮するのです」。ミツバチの消化酵素によって糖分がブドウ糖と果糖に分解され、花粉も混ざるためにアミノ酸やビタミンなどの栄養素が加わります。
「ミツバチと花の関係は、双方が得をするもの。花は花粉を媒介してもらえるし、ミツバチは食糧を得られる。ハチミツを人間がいただくとき初めて負が生じるわけですね。私たちが植物を守り育てることが、その負を返していく方法ではないでしょうか」