「葬儀社選びなどの準備は、元気なうちに始めるのがおすすめ。冗談で話題にできるころに始めるのがベストです」
こう言うのは、関西在住の人を対象に、葬儀に関する相談や、葬儀社の紹介を無料で行う「葬儀サポートセンター関西」(大阪市)の寺田友彦さん。確かに、こうした選択は簡単ではないので、頭も体も元気なうちに考えておくほうが効率的といえますね。
実際、近ごろは、若い人からの問い合わせも増えているとか。
「一番多いのは60代の方ですが、20~40代の方からの連絡もあります。“親に頼まれて情報収集をしている”“親を亡くしたとき、事前に葬儀の希望を聞いておらず、今でも悔いが残る”という方から、独身で、ご自分のエンディングについて考えをまとめたい方まで、さまざまです」
若い人も当事者になる可能性はあり、納得いく選択のために、積極的に情報収集をする姿勢がうかがえます。
ちなみに、昨年、葬儀サポートセンターに寄せられた相談で最も多かったのは「家族葬または直葬(通夜・葬儀をせず、火葬のみを行うこと)をしたい」というもの。
最近よく耳にするようになった、この「家族葬」という言葉。「明確な定義はありませんが、家族や親族、ごく親しい人といった身内で行う葬儀を指すことが多いです」とのこと。
「葬儀の際、周囲に声をかけ、人が集まることが当たり前だった時代、お集まりいただいた方に故人とお別れいただくことを『本葬』、その前に家族だけでお別れする時間を『密葬』と分けて呼んでいました。現在、本葬はなし・密葬形式のみで葬儀を行いたいという方が増え、これが『家族葬』と呼ばれるようになったのです」
小規模で行う家族葬が人気の理由は、参加人数が減るため、費用が軽減されることと、接待などに手間を取られず、故人をしのぶ時間がゆっくり取れること。
ただ、寺田さんによると、必ずしも「安い」というわけではないようです。
「家族葬はほとんどの場合、一般葬と同様に通夜・葬儀を行います。宗教儀式は省かれません」。つまり、何かがカットされて安いのではなく、参列者が少ないから費用が抑えられる面があるのです。しかし、先述のとおり、家族葬に明確な定義はないため、ときには参列者が50人以上に膨らみ、用意した式場では対応できないといったトラブルも。また、祭壇や演出にこだわれば、費用がかさむ場合もあります。
では「身内だけで行う分、家族葬は気遣いが少ない」というのは本当?
「通夜や告別式では故人をゆっくりと見送れますが、その分、後日、参列できなかった友人知人が“お線香を上げさせてほしい”とそれぞれのタイミングでいらっしゃることもあります」
葬儀の後、死亡届などの手続きに追われるころ、来訪客がある可能性は考慮したほうがよさそうです。
反対に、“費用がかかる”ととらえられがちな一般葬は、工夫次第でコストを下げられる場合も。
「葬儀社の提案をしっかりと確認し、不要なものを省くなど、相談が大切になってきます。また、一般葬は故人の元同僚など、生前には遺族との付き合いがなかった人から、家庭では知ることのできなかった故人の一面がうかがえるといった良さもありますよ」
「家族葬」「一般葬」といった言葉にとらわれず、自分や家族の望む葬儀の方法を事前に把握し、納得できる葬儀を行いたいですね。
現在は書店などで目にすることも多いエンディングノート。大阪市中央区に本部を置く、シニアのボランティア団体、NPO法人「ニッポン・アクティブライフ・クラブ」(NALC)のメンバーが、2003年に作りました。
最初は会員向けに販売していたこのノート、テレビや新聞で取り上げられたのをきっかけに、全国から申し込みが殺到。またたく間に広がったといいます。
「エンディングノートというネーミングは、誰からともなく言い出して、“スマートでいいんじゃない”と自然に決まったんです」とエンディングノート企画室長の早野矢須男さん。現在改訂を重ね、約12万部を発行。表紙のデザインや、介護事情などについて解説するコーナーを時代に合わせて改良しています。
「ナルク エンディングノート」は1冊1050円(送料別。5冊まで180円)。購入を希望する人は、氏名・〒・住所・電話番号・冊数を明記し、ファクスで申し込みを。
FAX:06(6941)5130。NALC=TEL:06(6941)5448、http://nalc.jp/
ポイント
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「うちには財産なんてないから関係ない」なんて言ってるあなた、
本当にそうでしょうか? 相続や遺言は、資産家だけの問題ではなくなりつつあるのです。
今年の4月から、相続税が改正されるのを知っていますか?
「この改正で、相続税の大衆化がなされます。相続税を払わなければならなくなる人が、これまでよりも増えるんです」と相続手続支援センター京都南の杉田徳行さん。
そもそも相続税とは、受け継いだ遺産が「非課税枠(税金がかからない金額)」を超えた際にかかるもの。今回の改正で、この非課税枠が縮小されるので、その結果、相続税を払うことになる人が以前よりも増えることが予想されます
資産家が書くといったイメージのある遺言ですが、遺産の多い・少ないに関係なく、以下に該当する人は書いたほうがいいそうです。
・配偶者に十分な財産を残したい人
→たとえば、子どもがいない夫婦の夫が亡くなった場合、夫の兄弟姉妹にも相続権が生じ、相続手続きの際に、兄弟姉妹の実印の押印が必要。「争族」になることも。遺言を書けば、すべての財産を妻に残せます
・相続人がいない人
→遺言を書かなければ、財産は国庫に帰属することに。遺言を書くことで、お世話になった人などに財産を残せます
・長男の妻やお世話になった施設の人など、 相続権のない人にも財産を贈りたい人 …など
※遺言書が書かれなかった場合、財産は法定相続といって、法律で定められた優先順位に基づき、相続権のある相続人しか財産を相続することができません。
また、遺言書には、自分で書くもの(自筆遺言)や弁護士・司法書士・行政書士などにチェックしてもらえる公正証書遺言などがあります。最近、自分で書けるように「遺言キット」も販売されていますね。
「遺言は一個所でも漏れがあったら無効になることを忘れないで。専門家にチェックしてもらうのがおすすめです」(杉田さん)