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困った!ご近所トラブル
〜気持ちよく暮らすため、解決に向けてしたいこと〜

各分野で活躍する3人からの トラブル対応のためのアドバイス

その場にふさわしい自己主張を

佛教大学 臨床心理学研究センター所長
(臨床心理学科教授)の松瀬喜治さん

「お隣さんの夫婦げんかや騒音がうるさくて、ウツになりそう」
「路上駐車のため、わが家の車がガレージから出せずストレスに」

ご近所さんの迷惑行為でイライラが募っているという読者も多数。トラブルによるストレスは心身に影響を及ぼすこともあるので、気をつけたいことがあれば知っておきたいですね。佛教大学 臨床心理学研究センター所長の松瀬喜治さんに尋ねました。

松瀬さんによると、トラブルの対応には主に次の3つのタイプがあるのだとか。


【1】攻撃的な対応
「苦情やクレームを、怒鳴る、威嚇するなどしながらアグレッシブに伝えることです。これは、言うほうはスッキリしますが、相手のことは無視したやり方。しかも、相手によっては逆効果になることもあります」
【2】回避的対応
「角が立つのもいやだし、【1】のようなやり方はできないという場合、相手との付き合いをやめたり、我慢するというものです。でも、いつまで続くのか不安になったり、ノイローゼになる可能性もあります。家族など周りの人に八つ当たりをすることもあるかもしれません」
【3】理想の自己主張的対応
「【1】は一方的に怒り、相手を変えようとするやり方。【2】は我慢することで自分を変えようとするやり方。そうではなく、相手には配慮しつつ、自分の気持ちをその場にふさわしい方法で相手に伝えることができれば理想的です」

例えば、騒音で困っている場合は、「『騒音が続いてつらいんです。少し音を抑えてください』と、“お願いする”姿勢で、困っていることを誠実に伝えます」。

相手の行動の意味やプロセスも考えましょう。
「ゴミ出しの時間を守ってもらえないなら、『ルールを知らないのだろうか? 慌てていたのだろうか?』など、相手の状況を考え、想像することで気持ちに余裕が出てきます。相手のこと、自分のこと、状況を同時に考えると対応しやすくなるんです」

それでも、うまく対処できないときは…。
「自分で何でもやろうとする必要はありません。自治会長さんや、頼れるご近所さん、管理人さんなど、うまく対応できる人にお願いすればいいんですよ。ストレスがたまってしんどくなったら、カウンセラーに話を聞いてもらうのも一つの方法。解決策を見つけるお手伝いができるかもしれません」

自分も相手も大切にした表現を工夫

メンタルヘルス・コーチング
「スリー・バイ・スリー」主宰の勝見九重さん

トラブル解決のためには、まず相手に困っていることを伝える必要があるものの…。今後のお付き合いを考えると「なんと言えばいいか分からない」「波風たたないように話すには?」など、言い出しにくいという人も多いのでは。

そこで、メンタルヘルス・コーチング「スリー・バイ・スリー」主宰の勝見九重(このみ)さんに“上手なノーの伝え方”を聞いてみました。

「自分も相手も得になるような話し方として、アサーティブという方法を紹介します(表参照)。これは“上手な自己主張”のテクニックです。服従的でも攻撃的でもなく、どちらにもメリットがある関係を目指しましょう。

ただ、普段あまり交流がない人から話しかけられると相手もびっくりするので(笑)、日ごろからご近所の方とコミュニケーションを取っておくことが大切ですね」

「ゴミ出しのルールを守ってくれない人への伝え方」一例
【1】状況・事実を述べる
「事実に対しては反論できません。そこから話を始められるかが重要です」(勝見さん)
☆「ゴミは午前8時までに出すのがルールですよね」
【2】意見や考えを述べる
「自分を主語にして、自分の考えを述べましょう」
☆「ゴミ出しの時間に間に合わないと、収集されないまま残ってカラスや野良猫が荒らして不潔だし、後始末も大変で困っているの」
【3】提案する
「自分の考えに基づいて提案します」
☆「この時間に出せない理由があるなら、みんなでそれについて検討したいと思っているの」
【4】肯定的な成り行きを示す
「提案を実行すればどうなるかを示しましょう。この提案の中で、相手の権利を守ること、相手のメリットを入れることがポイントです」
☆「話し合うことで解決策が見つかったら、みんなが気持ちよく過ごせるよね」
意識的に、地域のつながりを深めよう

有隣自治連合会会長
大田垣義夫さん

ご近所トラブルも、元をたどれば“人と人”。ご近所同士のつながりが深ければ、「どんな人か分からないから注意しづらい」「近くに相談できる人がいない」と悩むことも少なくなるかも!?

そこで、地域コミュニティーの活性化を目指し、検討委員会を組織することで具体策を探っている京都市文化市民局 市民生活部の矢部広就さんに「地域のつながりを深めるために積極的に取り組んでいる自治会を紹介してください」とリクエスト。こうして名前が挙がったのが、有隣自治連合会(下京区)です。同会会長の大田垣義夫さんに話を聞きました。

「まずは、町内会単位で人と人のつながりができるような“きっかけづくり”を行うことが大切。イベントや行事などの取り組みを通して、ご近所同士で親しさが生まれ、普段からコミュニケーションを取ることができるのではないでしょうか」

そうすれば、いざ困ったことが起きたときに自分の気持ちを伝えやすい、理解してもらいやすいのでは、と大田垣さん。

「昔は“向こう三軒両隣”なんていいましたが、今は意識的にしないとつながりは生まれません。

例えば、私の町内にあるマンションでは組分けをしていますが、あえて101号室・201号室…を1組、102号室・202号室…を2組にするなど、縦のラインで組分けする事で、フロアが違って普段、顔を合わせづらい人たちを同じグループにしているんですよ」 人と人のつながりを高めるのは、こんなちょっとした工夫かもしれませんね。

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