孤独の中華そば『江ぐち』
久住昌之 牧野出版・1680円
厨房(ちゅうぼう)の店員は何思う…?今夜も妄想劇場の幕が上がる!
飲食店のカウンターの向こう、それは客にとってある種の秘境であり、その内部を妄想すればするほどそのエキゾチックな密林は奥深く怪しい輝きを放ちます。
この本の筆者は足しげく通う近所のラーメン屋の従業員を演者に見立て、ライブや演劇のごとく店を観察し、楽しみました。店員たちの素顔は妄想によって補完し、「アクマ」「オニガワラ」といったでたらめなニックネームを与え、その関係に思いをはせます。そんな妄想とお店への愛着がつづられるのですが、これがめっぽう面白い。お店の個性そのものを愛し楽しむ著者の姿勢は、外食が空腹を満たすだけのものではないことを見抜いているのです。
【紹介者】
恵文社一乗寺店 堀部篤史さん
恵文社一乗寺店 堀部篤史さん
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