今回はちょっと上を向いて歩いてみました。
街中散策中、私は古い看板を観るのが好きで、右から名前が書かれているものを発見すると、そのお店は何屋さんなのか気になり調べてみたりします。
そんな時、伝統工芸イベントのお手伝いをした会場で見つけたリーフレットに、「歴史あるお店の看板の中には、著名な方が書かれたものがある」ことが記載されていました。
「ならば、確認せねば」という訳で観て回ると、看板を書かれた著名な方々は、そうそうたるメンバーなのに驚かされました。
姉小路通りは看板ミュージアム
ボランティア先からドラムレッスンへの行き来でいつも歩く姉小路通り。熟知していると思っていたのに、看板は意外に見落としていたので、烏丸通りから西へと順に確認してみることにしました。
①車屋通付近にある、京菓子店「亀末廣」さん。美しい看板の文字は、明治~昭和初期の書家・山本意山(やまもときょうざん)さんの書。意山さんは、京都で多くの子弟を教育されたとか。この文字も100年以上経てなお、格式高いお店にマッチした、几帳面で風格のある、少し暖かさも感じる良い文字ですね。
②すぐ東には表具のお店「春芳堂」。なんと、京都画壇の巨匠竹内栖鳳(たけうちせいほう)さんの文字だそうです。第1回文化勲章受章者の日本画家の筆が、当たり前のように長年みなの目に触れているとは、何と贅沢な…。
栖鳳さんの絵は写実的という印象ですが、看板の文字は、ぽってりとして、ほのぼの温かさを感じる文字でした。
③さらに東へ進みました。 柚味噌専門店「八百三」の看板は、北大路魯山人(きたおおじろさんじん)さんが自ら彫刻までされたらしく、現物は店内にあるそうです。表に掲げられているのは、模刻品とのことですが、線が太く味わいのある印象的な文字ですね。どっしりとした豪快な感じは、魯山人さんの陶芸作品の雰囲気に通ずるところもあるなと思いつつ拝見しました。
④もう少し進んで行くと、画材店「彩雲堂」さんの看板。達筆ですね~。
こちらは私の目でサインも確認できました。鉄斎…文人画家・富岡鉄斎さんの文字。店主の藤本氏のために書かれたようですね。薄緑が年代物の木の色に映える立派な看板です。
⑤そばぼうろで有名な「河道屋」さんの看板。こちらは一燈園を設立した、思想家・政治家の西田天香(にしだてんこう)という方が書かれた文字のようです。
⑥最後、突き当りの寺町通を少しだけ北上しました。和菓子店「亀屋良永」さんの看板も、ずっと気になっていたので羊羹を買いに行って尋ねてみました。
当時の店主さんが小説家・武者小路実篤(むしゃのこうじさねあつ)さんの大ファンで、人づてに依頼して書いてもらわれたとお聞きしました。確かに、看板にも「実篤」のサインがありました。
そしてこの看板の「亀」の漢字、よく見て見ると、旧仮名遣いでむちゃくちゃ可愛いんですよ。
芸術品が生活の中に息づく京都
今回は、姉小路通り付近の散策で見つけた看板でしたが、市内を巡れば他にもまだまだあるはずです。
和菓子屋さんの包み紙に日本画家の絵が使われていることもありますし、意外な方の手掛けた作品がそこかしこで見つかる…京都ってそんな街なんですね。
プロフィール
大好チヨ子
在住エリア:京都市西京区
メインテーマ:博物館などのアートイベント/パン屋さん
子育てを終えて、ようやく京都歩きを楽しめるようになりました。知識がない私でも「楽しい!美味しい!美しい!面白い!」と感じたり「知っていたらお得」な情報をゆる~く伝えてゆきたいです。趣味はドラム演奏と、博物館ボランティア。
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