11月10日は「和紅茶の日」。日本国内で生産された紅茶を「和紅茶」と呼び、最近人気が高まっているとか。その特徴や魅力について、京都で販売や生産に関わる人たちに話してもらいました。
撮影/桂伸也、深村英司ほか
「作り手によって味や香りに違いが。85〜92℃のお湯で抽出するのがおすすめ」
「香りの華やかな海外産の紅茶に比べ、和紅茶は落ち着いた香りのものが多いように思います」と話すのは紅茶を中心に扱うカフェ「紅茶専門店 一怜縁(いちれいえん)」の店主・中嶋勇介さん。
和紅茶も海外産の紅茶も、作る工程は基本的には変わらないのだとか。茶葉を発酵させると紅茶になります。ちなみに、発酵させなければ緑茶になるそう。
「同じ茶葉を使ったとしても、作り手によって味や香りに大きな違いが出ます。その土地や生産年度による個性が出るのも魅力的ですね」
現在、国内に700カ所以上の産地があるといいます。好みのものを探す楽しみも広がりそう。
和紅茶の飲み方については、「ストレートがおすすめ」と中嶋さん。
「85~92℃のお湯を茶葉に注ぎます。茶葉の分量や抽出の時間は袋などに記載された〝入れ方〟を守って。抽出できた分はカップに注ぎきるか、温めた別のポットに移せば渋くなり過ぎずに飲めます」とのこと。〝水出し〟も手軽で失敗がないといいます。
「ティーバッグを水に入れ、冷蔵庫で一晩置けば完成。数日は保存できます。茶葉は1〜2日で取り出しましょう。アイスティーだけではなく、小鍋に入れて温めて飲んでもおいしいですよ。まずは気軽に楽しんでもらえれば」
( 教えてくれた人 )
紅茶専門店
一怜縁
中嶋勇介さん
京都市中京区東九軒町332
「優しいけれど個性があり、どら焼きとの好相性を実感」
京都市内の旧家の土蔵をリノベーションしたカフェ「銅鑼(どら)焼きと和紅茶 乃咫(のた)」。同店オーナー・松永エカテリーナさんはロシア出身です。ロシアでは〝サモワール〟と呼ばれる紅茶専用の湯沸かし器が古くから使われていたり、スーパーマーケットでは日本の何倍もの広さの紅茶売り場があったりと、紅茶文化が根付いているそう。
そんな松永さんが、和紅茶と出合ったのは、同店のオープン前、看板商品となるどら焼きに合う飲み物を探していたときのこと。「初めて飲んだときハッとさせられた」といいます。
「とにかく味が優しいんです。といっても、個性があって、ほかに似たような紅茶はありません。どら焼きの味を打ち消してしまわないところも気に入りました」
現在は、和紅茶そのものおいしさを味わってもらうことにも力を入れていて、地元・京都や奈良など全国から選りすぐったものを常時5種類用意しています。
「一口飲んで、驚いた顔をなさる人も。これまでの紅茶のイメージと違うと感じるのでしょう。そんな方がお土産にと、テイクアウト用の茶葉をお求めくださったりすると、和紅茶の魅力が共有できたと、うれしい気持ちになります」(松永さん)
( 教えてくれた人 )
銅鑼焼きと和紅茶 乃咫
松永エカテリーナさん
京都市中京区六角通新町西入ル西六角町101
京都の〝お茶の産地〟でも生産されています
京都でも和束町や南山城村などのお茶の産地で「和紅茶」の生産が行われています。地元の茶農家に、生産に至った経緯やこだわりについて話を聞きました。
「紅茶の生産量が7割に。緑茶の技術も活用しています」
和束紅茶(和束町)・杉本喜壽さん
和束町では、近年、紅茶の生産を手がける茶農家が増えているそう。
「私で4代目になりますが、元々は緑茶や煎茶のみ生産する農家でした」とは、「株式会社和束紅茶」代表の杉本喜壽(よしひろ)さん。
「15年ほど前、奈良や滋賀の茶畑で紅茶を生産していると聞き、視察したのをきっかけに紅茶の生産を始めました」
そして、自社の茶畑に合う生産方法を模索していったのだとか。現在、紅茶の生産量が同園全体の生産量の7割を占めるといいます。
「紅茶の製造は、1日かけて葉の水分を抜く必要があるなど、緑茶に比べると時間がかかり、大規模生産がしづらいですが、逆にそれが和束のような小規模な山間地茶業には向いていると思って。可能性を感じたんです」
紅茶の製造には、緑茶のさまざまな生産ノウハウが生かされることも。
「収穫時や製造過程で、葉の状態を見ることが大事なのは紅茶も緑茶も同じです。また、カテキンと結びついて品質が損なわれないよう真ちゅうが使われた揉捻(じゅうねん)機(※)など、緑茶用の機械が役立つ場面もありますよ」
飲食店などからの需要も増え、次第に紅茶の生産を増やしていったそう。
杉本さんが考える和紅茶の魅力とは―。
「栽培や製造方法によって紅茶の風味が変化するのが面白いですね。また、スイーツの余韻を邪魔せず、魅力を引き立てる物だと思います。さまざまなスイーツや料理とのペアリングを楽しんでください」
(※)水分のむらをなくすため、茶葉に圧力を加えもむ機械
「試行錯誤の後、ようやく納得のいくものを作れるように」
中窪製茶園(南山城村)・中窪良太朗さん
京都府の東南部に位置する南山城村。こちらで和紅茶作りを行うのが、100年以上続く茶農家「中窪製茶園」です。
5代目・中窪良太朗さんは大阪でサラリーマンを経験したのち、2018年に家業を継いだそう。「当時、当園の緑茶はさまざまな賞をいただくなど評価を得ていましたが、当園の和紅茶は認知度すらまだまだでした」と、振り返ります。
南山城村で和紅茶の生産が始まったのは約15年前。数軒の農家が集まり、村ならではのお茶を作ろうとのプロジェクトがスタートしました。しかし、中窪さんが同村に戻ってきたころ、和紅茶を作り続けていたのは同園だけだったのだとか。
「作る以上は、自慢の緑茶に引けをとらない和紅茶を」と決意し、独自に研究を重ねていった中窪さん。
「2~3年間、試行錯誤を繰り返し、ようやく納得のいくものができました」
こちらの和紅茶の一番の特徴は、お茶本来の味が生かせるよう茶葉の形状を残す〝フルリーフ〟にこだわっている点。紅茶の製造で必要な萎凋(いちょう)、揉捻、発酵、乾燥という工程で、茶葉をつぶさず仕上げられるように苦心したといいます。
「新ジャンルであるからこその自由度が和紅茶にはある」と話します。
「その時その時の茶の芽と相談するように、様子を見ながら作っていく点が面白いところですね」
大原産の赤しそを加え、フレーバーティーにも
「和紅茶は、タンニンが少なく、優しい味わい。本来、フレーバーティーにはあまり向かないように思っているんです」とは、「紅茶舗治郎兵衞 京都北山店」のオーナー・富田絢子さん。同店は、「和洋の垣根を超え、京都人の自由な感性が生み出すお茶」をコンセプトとしたフレーバーティーを販売する専門店です。
8年前、大原に本店をオープンするとき、地元の素材でもある赤しそを使った製品をつくりたいと考えたそう。いろいろと試したなかでしっくりとマッチしたのが、「おくみどり」という品種の茶葉を使った岡山産の和紅茶。このマッチングからフレーバーティー「寂光」が誕生しました。
「絶妙なバランスでブレンドしたこの『寂光』は、優雅で繊細な味わいに。開店当初から根強い人気です」(富田さん)
また、富田さんが「これはそのまま飲んでほしい」と、特別にブレンドをせずに販売を決めたのが和束産の和紅茶「日輪」です。鎌倉時代から継承された在来種の茶葉を使ったもので、マイルドな味わいと、独特な香りが魅力だそう。
( 教えてくれた人 )
紅茶舗治郎兵衛 京都北山店
富田絢子さん
京都市左京区下鴨前萩町13-3 木村ビル1階
(2024年11月9日号より)
最新の投稿
おすすめ情報
- カルチャー教室
- アローズ
- 求人特集
- 不動産特集
- 京都でかなえる家づくり
- 医院病院ナビ
- 高齢者向け住宅 大相談会
- バス・タクシードライバー就職相談会in京都
- きょうとみらい博