知っておきたい〝検診〟のキホン

2024年10月11日 

リビング編集部

知っておきたい〝検診〟のキホン

定期的な受診が推奨されている、胃がんや乳がんなどの検診。「受けなければ」と思いながら後回しになっている人もいるのでは。そこで、改めて主な検診について受診の推奨年齢や検査方法などを医師に解説してもらいました。

イラスト/フジー

病気を早期発見するための検査です

そもそも検診とは?職場や病院で受ける健康診断とは違うのでしょうか。

「検診とは、特定の病気を早期に発見するための検査のこと。一方の健康診断や健康診査(健診)は、全般的な健康状態をチェックするためのものです」と話すのは、京都府医師会 理事で内科医の上田三穂先生。

「特に、がんは命に関わる病気ですが、進行する前に発見すれば治る可能性が高まります。家族や周りの人に笑顔でいてもらうには、自分自身が元気でいることが大切。自分のことをつい後回しにしがちな人は、身近な誰かのためと思って定期的に検診を受けてください」

検診は対策型・任意型の2種

検診には、主に、自治体が実施する対策型検診(住民検診)と、人間ドックに代表される任意型検診の2種があります(下表参照)。「対策型検診は対象となる年齢は決まっていますが、公費による助成があるため無料や低額で検査を受けることができます」と上田先生。一方の任意型検診は希望の項目を自分の受けたいタイミングで受診できます。職場の健康診断に、無料や低額のオプションとして追加できる場合もあるそう。

なお、持病があって定期的に病院や診療所に通院している人の中には「きっと持病以外の病気もチェックしてもらっているだろう」と思っている人も。しかし上田先生によると、「病気や診療科によっては、検診に相当する検査が診療内容に含まれていない場合があります。定期的に通院している人も、別途検診は受けましょう」。次に主な検診について詳しく解説します。

対策型検診

住民などの集団を対象に、公共的な施策として実施される検診。自治体から案内が届く住民検診がこれにあたります。科学的な研究に基づく検証により死亡率の減少効果が認められているため、公費で助成されます。

たとえば京都市では、国が推奨する各種がん検診を中心に住民検診を実施。対象年齢の人は指定医療機関、各区役所・支所などで受診することができます。

任意型検診

個人が自身の判断で医療機関で受ける検診。代表例として人間ドックがあります。検査項目が豊富で、気になる症状や希望に応じ項目を自由に追加できるのが特徴です。自由診療で、検査内容や項目の数に応じて数万円〜10万円前後の費用がかかる場合もありますが、加入している健康保険組合から補助金が出ることもあります。

病気を発症するリスクが高まる年齢から受診を

具体的にはどんな検診があるのでしょうか。上田先生、京都府眼科医会 会長で眼科医の柏井真理子先生、京都府歯科医師会 理事で歯科医の尾﨑明子先生に、主な検診を教えてもらいました。

検診ごとに推奨年齢も紹介していますが、その年齢から受診が推奨される理由とは。

「検診は病気を発症するリスクが高まる年齢で受けるのが基本。病気の早期発見・治療につながり、異常がなければ安心できるといったメリットがあります。一方、体に負担がかかるといったデメリットも。がん検診の場合、メリットがデメリットを上回る年齢が推奨年齢とされています」(上田先生)

検診の申し込み方法や受診料金などは、医療機関のホームページなどで確認を。自治体が実施する対策型検診の詳細は、各市町村のホームページで。

がん検診

肺がん

  • 推奨年齢:40歳以上
  • 受診頻度:1年に1回

胸部X線(レントゲン)検査が基本。肺がんのほかに、結核や肺炎が発見されることも。問診の結果、喫煙歴が長い場合などに、痰(たん)を採取して顕微鏡で見る喀痰(かくたん)検査が追加されることもあります。

胃がん

  • 推奨年齢:50歳以上
  • 受診頻度:2年に1回

検査方法は胃内視鏡(胃カメラ)検査または胃部X線(バリウム)検査から選べます。どちらを受けるか迷った場合は胃内視鏡検査がおすすめ。
そのほか、血液検査でピロリ菌感染の有無を調べる「胃がんリスク層別化検診」も。こちらは自治体によって対象年齢が異なります。

大腸がん

  • 推奨年齢:40歳以上
  • 受診頻度:1年に1回

検査方法は便潜血検査など。2日分の便を採取して出血の有無を調べます。便に微量でも血が混じっていると、大腸にがんかポリープができている可能性があります。精密な検査は内視鏡で行われます。

前立腺がん(男性)

  • 推奨年齢:50歳以上
  • 受診頻度:2年に1回

血液検査でPSA(前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパク)値を測定。基準より高い数値が出ると前立腺がんの疑いが。前立腺炎や前立腺肥大症がある場合もPSA値が高くなることがあります。

子宮頸がん(女性)

  • 推奨年齢:20歳以上
  • 受診頻度:2年に1回

若い世代にも多い子宮頸がん。子宮の入り口の細胞を採取して調べることで、がん細胞だけでなく、がんになる前の細胞があるかどうかもわかります。京都市では免除制度として、20・24・28歳の女性に無料クーポン券を配布。

乳がん(女性)

  • 推奨年齢:40歳以上
  • 受診頻度:2年に1回

主に、マンモグラフィー(乳房専用のX線撮影)を使ってしこりや石灰化がないか調べます。乳がんの早期発見のためには、日頃から自分で乳房をチェックする「ブレスト・アウェアネス」も大切。京都市では、40歳の女性に無料クーポンを配布。

※がん検診については全て上田先生に取材

肝炎ウイルス検査

  • 推奨対象:同検査を受けたことがない人、自分の検査結果を知らない人

血液検査でB型・C型肝炎ウイルス感染を調べます。感染を放置すると、慢性肝炎から肝硬変や肝がんになることが。B型肝炎は1988年以前の集団予防接種で感染しているおそれもあります。(上田先生)

骨密度検診

  • 推奨対象:閉経後の女性、25歳ごろと比べて身長が2cm以上縮んだ人、飲酒・喫煙をする人
  • 受診頻度:女性は閉経後3年以内。初回の検査結果によって1〜5年に1回

骨粗しょう症を早期に発見して、予防や治療を行うための検査。京都市では自治体による骨密度検診は実施されていないため、人間ドックなどの健診施設でX線を用いたDEXA法・MD法か、イベントなどで実施されることもある超音波測定法で検査を。(上田先生)

眼科検診

  • 推奨年齢:40歳以上
  • 受診頻度:1年に1回

眼科で視力検査、前眼部検査、眼圧検査、眼底検査を受けるのが基本。前眼部検査では白内障やドライアイなど、眼圧検査では主に緑内障、眼底検査では緑内障のほか、黄斑変性症、糖尿病網膜症など網膜の病気の有無を調べます。

中でも緑内障は初期には気づきにくく、治療しないと失明するリスクが。一般の健診で行う目に関する検査は通常、視力検査のみなので、緑内障の早期発見のためには眼科で検診を受ける必要があります。目の不調や違和感、見えにくい、目が疲れるといったアイフレイル(加齢に伴う目の機能低下)を放置すると、目の健康寿命が短くなって将来のQOL(生活の質)に影響することも。(柏井先生)

歯科健診

  • 推奨年齢:18歳以上
  • 受診頻度:3カ月〜6カ月ごとが望ましい

歯科で虫歯や歯周病の有無、歯並びなどをチェック。歯はライフステージに合わせて定期的な検査が必要です。歯周病は45歳以上で過半数の人が罹患(りかん)しているといわれ、糖尿病を患っている人は合併症として症状が現れることが。妊婦の場合、低体重児や早産のリスクも高まります。75歳以上の後期高齢者はオーラルフレイルの心配も。

自治体による歯科健診は地域によって対象年齢が異なり、指定医療機関や区役所・支所などで受診できます。(尾﨑先生)

※歯科検診は特定の疾患だけでなく口の中全体を検査するため、一律「健診」と表記される場合が多いそう

検診で異常が見つかったら、必ず精密検査を

検診後、要精密検査という結果が出た場合には、精密検査を受ける必要があります。「中には、異常と判定されても精密検査を受けずに放置してしまう方もいるようです。検診結果に応じて、必ず指定された検査を受けましょう」と上田先生。

検査をきっかけに、がん予防や骨密度維持に向けた生活習慣を見直すのが理想的とか。

長く健康でいるためにできることは、検診だけではありません。「普段から気軽に相談や検査ができるかかりつけ医を持つことをおすすめします」(柏井先生・尾﨑先生)、「生活習慣病などの予防や早期発見のために、特定健診をはじめとする健康診断を受けることも大切」(上田先生)。

検診と健診、どちらも忘れずに受診したいですね。

(2024年10月12日号より)