地域と交わる・つながる「子ども新聞」の活動

2023年11月10日 

リビング編集部

子どもが読むための新聞ではなく、「子どもが作る新聞」を発行している団体が伏見区にあります。新聞を通じて地域にも変化があったようです。

「幸せになるためにはどうしたらいいのかを取材しました。先生に聞きました。自分の周りの人が幸せになることが大切。悲しくなる人が少ない世界にしたいと言っていました。僕は、ゲームをすることやおやつを食べることが好き。ひとりでするのもいいけどみんなで楽しくしたいなぁと思いました(小学2年生)」

こちらは、「ふしみ子ども新聞」の紙面の一部。「子どもが作って大人が読む新聞」として、伏見区の任意団体「inоte+P(あいのてぷらすぴー)が発行しています。取材を行うのは小学生の〝子ども記者〟。

「新聞制作を始めたのは昨年5月。通常は3カ月に1度開催されるイベント『向島駅前わいわい元気バザール』のワークショップで行います。遊びに来ている子どもたちに呼びかけて、他のブースの店主たちや参加者を取材してもらうんです」とは、同団体代表の服部加奈子さん。

「どんなことを質問するかは基本的に子どもに任せますが、くじ引きでテーマを決めることも。照れながらもみんな一生懸命に取材していますよ」

取材時の会話を服部さんらメンバーが録音して、A3両面の新聞記事にまとめます。

「できあがった新聞は次回のバザールで配ったり、区役所や図書館に設置したりしています。文章の9割は子どもたちが話したままの言葉。地域の人からは『子どもたちの考えがよくわかる。楽しみにしています』と言ってもらっています」

同バザール以外に、「京エコロジーセンター」や「伏見青少年活動センター」など各所へ取材に行くことも。

子ども記者として3回参加したという小学5年生の子は、「働いている人など、普段は聞くことのない人の気持ちを聞けておもしろい。町や施設を歩きながら疑問を見つけられるのが楽しいです」と話してくれました。

バインダーを手にインタビューする子ども記者。服部さんらメンバーが会話の橋渡しをすることも
「伏見青少年活動センター」での取材の様子
「ふしみ子ども新聞」(2023年7月号)の紙面の一部。この号では子ども記者が「最近笑顔になったこと」を取材しました

子どもたちを地域とつなぎたい

服部さんが「子ども新聞」の活動を始めるきっかけとなったのは、地域で孤立する高齢者の存在でした。

「人の幸福には、地域の人との信頼関係やつながりが大きく影響します。子どものころから地域と交わることが重要で、そのための手段として考えたのが子ども新聞です」

高齢者福祉の仕事に携わる服部さん。現在は、職場の同僚や幼なじみなど賛同してくれるメンバー5人と活動中。「ふしみ子ども新聞」以外にも、「深草こども食堂」とコラボした「ふかくさ子ども新聞」を月1回発行しています。特別版として、市内の企業や施設の依頼でワークショップを開き、「きょうと子ども新聞」として制作したことも。子どもたちの参加費はすべて無料。新聞作りの費用は、伏見区区民活動支援事業の助成金や、企業・一般の人からの寄付を活用しています。

子ども新聞で「向島にテーマパークがあれば」という記事を読んだ地域住民が、「テーマパークは無理だけど、クリスマスツリーを作ろう」と公園の木を飾りつけてくれたこともあったそう。

「アナログなツールだからこそ生まれる人の交流がある」と服部さん。「京都はもちろん、全国に『子ども新聞』の活動が広まればと願っています」

活動の詳細はホームページ=https://kyoto-kodomo-shinbun.my.canva.site/=で確認できます。問い合わせはメール=inoteplusp@gmail.com=で。

「inote+P」のメンバーたち。旗を持っているのが代表の服部さん

(2023年11月11日号より)