新撰組ゆかりの地として有名な壬生(みぶ)エリアにある「壬生京極会商店街」。毎年秋、商店街を挙げて行われるのが「壬生京極まつり」です。第7回となる今年、壬生の歴史を振り返る写真展が企画されていると聞き、取材に訪れました。
壬生エリアを含む中京区が誕生して今年で90年。「これを機に、改めて地元のよさを感じられる企画を『壬生京極まつり』でやろうと思ったんです」。そう話してくれたのは、商店街で理容店を営む松本隆秀さん。祭りの実行委員長です。
テーマは「壬生の温故知新~交通編~」。1920年~1970年代にかけて、交通の要所としてにぎわいを見せていた壬生。その様子が写真パネルで紹介されます。
「壬生の玄関口である阪急『大宮』駅はむかし、『京都』駅だったんですよ」と、松本さんが見せてくれた写真には、「阪急電車のりば」の看板の上に確かに「京都駅」の文字が。1963(昭和38)年に「河原町」駅ができるまで、現阪急電鉄京都本線の終着駅だったそう。
「この『京都』駅より東側に京都市電が、西側には市営のトロリーバスが走っていて、交通機関の一大ターミナルになっていたんです」
ほかに国鉄(現在のJR)や京福電鉄が通る壬生には、周辺からたくさんの人が訪れて活気にあふれていたのだとか。
祭りで展示されるのは、そんな当時の様子がうかがえる貴重な写真30~40点。当日は、交通機関に精通した大学教授が写真の監修を行うほか、展示ブースでは鉄道サークルの学生による説明もあるそうですよ。
写真の多くは、商店街の各店が常連客に声掛けをして集めたそう。
写真提供者のひとり、商店街の近くに住む西出宗一さん(93歳)。商店街の電気店店主、尾北康則さんから今回の企画のことを聞き、自宅保管していた写真や資料を提供することに。今はない市電や商店街にあった映画館など、どれも思い出深いものばかりです。
「西出さんは、お宅に伺うとよく昔の話をしてくれて。古い写真などたくさん持っていると聞いていたので、協力をお願いしたんです」と尾北さん。松本さんも、常連客から壬生の昔の様子をたくさん教えてもらったそう。こうしたお客さんとの会話が、今回の企画のきっかけの一つにもなりました。
「物を買うだけではなく、コミュニケーションが図れるのが商店街のいいところ。おしゃべりだけして帰らはるお客さんもいます」。そう言って笑う松本さんと尾北さん。地元で紡がれてきた人と人とのつながりも、今回の企画展で感じてほしいとのこと。地元企業の「NISSHA」や壬生寺、京都市交通局も写真提供に協力。
「常連さんはもちろん、新しく移り住んできた人やほかの地域の人にも足を運んでもらって、〝壬生愛〟を深めてほしいと思っています」(松本さん)