今週からスタートしているNHKの朝ドラは、陶芸家を主人公にした物語。舞台はお隣の滋賀県信楽ですが、京都にも茶の湯と結びついた陶芸の文化が古くから続いています。長い歴史を持つ京都の陶芸の世界。抱えている課題や進行しているプロジェクトを取材すると、〝京都の陶芸の今〟が見えてきました。
京焼 目利きプロジェクト
「京焼カフェ」の会場となる「五条坂京焼登り窯」(通常非公開)で。右から、「京焼 目利きプロジェクト」のメンバーの眞先巧さん、中西さとかさん、井口陽渚(はるな)さん、中野ももさん。「明治の末から昭和40年代まで使われていた貴重な窯。これが残っているのは、各時代の人の『守りたい』という気持ちの証しです」(中西さん)、「未完成の作品や当時使われていた道具なども財産だと思います」(井口さん)
京都を代表する焼き物といえば、清水焼をはじめとする京焼。では、その特徴はというと…。
「何でもありなところです」と答えてくれたのは14人からなる「京焼 目利きプロジェクト」のメンバーの一人で、京都造形芸術大学の3年生・中野ももさん。
「多彩でさまざまな技法・表現があるので、特徴を一言で言い表すことは難しい。でも、それが京焼の良さ。自分の好みのものを見つける楽しみがあるんです」
こうした京焼・清水焼の特徴を大学生の目線で紹介しようというのが、同学と東山区役所が2018年から始めた「京焼 目利きプロジェクト」。
「私たちの選び方の基準は、見た目にビビッとくるもの。普段使いできるオシャレなものがいっぱいあることを、若い人にも知ってもらいたいと思っています」
多くの人に京焼・清水焼の魅力を発信するためにイベントも実施。11月には、京都市内に残る最大級の窯(現在、使用されていません)を会場にした2日間限定の「京焼カフェ」を開催予定。職人が作った京焼で、抹茶や和菓子などを味わえます。
「打ち合わせを重ねながら、作家さんとカフェ用の器を選びました」。そう話すのは、同プロジェクトメンバーで3年生の眞先(まっさき)巧さん。
「京焼を実際に手に取り、使ってみよう、買ってみようという人が増えると職人さんは潤います。収入が得られる仕事だと認知されることで職人のなり手が増えるはず」(眞先さん)
伝統産業を絶やしたくないという学生たちの思いも込められたこのプロジェクト。メンバーを指導する京都造形芸術大学の北條崇さんは、「学生たちは、作家や地域も京焼の魅力の一部と捉えています。イベントを通して、そういった目線も感じてもらえれば」と話していました。
イベント準備のために足しげく職人の元に通ったそう
カフェでは、作家から借りた京焼でお茶やお菓子を提供(昨年の様子)
開催期間 | 11月9日(土)・10日(日) 午前10時~午後5時 |
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会場 | 五条坂京焼登り窯(旧・藤平陶芸登り窯) =京都市東山区六波羅裏門通東入ル竹村町151-1 |
・登り窯ツアー ・京焼カフェ ・京焼入門コーナー
※京都やきものWeekわん碗ONE内のイベントです |
開催期間 | 10月19日(土)・20日(日) |
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会場 | イオンモールKYOTO 1階センターコート =京都市南区西九条鳥居口町1番地 |
時間 | 展示/午前10時~午後9時 ワークショップ/午前11時〜午後5時(休憩あり、有料、当日予約制) |
「伝統産業×食文化」新文化産業創造プロジェクト
(左から)委員会事務局の京都府立陶工高等技術専門校・訓練課長の杉山雅基さん、校長の小川嘉幸さん、副校長の泉谷和枝さん
料理をよりおいしく見せるには、器との相性も大切。皆さんも、無意識のうちかもしれませんが、日常生活で組み合わせを考えているのでは?
こうした、料理と器の関係を考える「『伝統産業×食文化』新文化産業創造プロジェクト」が昨年からスタート。若手料理人と若手陶芸家がコラボ推進委員会を立ち上げ、勉強会を開いたり、〝料理人が求める食器〟を作ろうというものです。
「料理人は『こういう料理をこういう器に盛りたい』と思い、陶芸家は『料理人の意図をくんだ器を作りたい』と思っていますが、その意見交換の場がこれまではありませんでした」と同委員会事務局の京都府立陶工高等技術専門校・校長の小川嘉幸さん。
器作りのテーマは〝守破離(しゅはり)〟。伝統の型に、さらに良いものを取り入れ、独自の新しいものを生み出していくという目標が掲げられています。今年の2月に続き、来年2月にも発表会が開かれる予定です。
プロジェクトを通して、次の時代を担う若手の陶芸家と料理人がよい関係を築き、新しい和食と陶芸の世界を一緒につくっていってもらいたいですね。
林侑子さん作「西施白磁 菊型鉢」、テーマは「寸の法則」。
「料理と器の足し算と引き算」をテーマにした田中信行さんの料理
プロジェクトメンバーに聞きました