上京区で、月に一度「つるかめ笑顔クラブ」という団体が開催している、「思い出語りの会」。懐かしい昔のことを話していると、いろいろなことが思い出されて話が弾むとか。健康のための交流の場となっていますよ。
7月、京都市上京区の乾隆(けんりゅう)地域包括支援センターの一室から「わっはっは、おっほっほ」と大きな声が。手をたたきながら体を伸ばす、60~70代の男女が約20人集まっていました。
「大きな声を出す練習。次は『いー、うー、べー』と口を広げてください」と〝式ばあちゃん〟こと式惠美子さん。月に一度開催される、「思い出語りの会」の冒頭の光景です。
昨年4月から、主に上京区役所で開催されている「思い出語りの会」。脳を活性化させて認知症を防ごうという取り組みが行われています。主催は「つるかめ笑顔クラブ」。代表の式さん、〝オイケのさぶちゃん〟こと上西三郎さん、〝寺子屋のがいちゃん〟こと毛利凱(がい)さんの3人で活動しています。
「高齢者の健康は、国にとっても京都市にとっても課題。楽しく健康に過ごすため、できることはないかと思って始めたのがこの活動です」と上西さん。若い頃の出来事や思い出を語り合う〝回想法〟と呼ばれる方法で、記憶をつかさどる脳の器官・海馬(かいば)が刺激されるのだとか。
〝思い出語り〟をするときは、話がしやすいように4、5人の少人数で、テーマが設定されます。今回は「終戦直後の日常生活の思い出」。それぞれの体験や思い出を口々に話し始めます。
「肝油って覚えている?」「幼い頃に別れたから、戦地から戻った父親が誰だか分からなくて」「遅くまで遊んでいると、近所の人によく怒られたなぁ」など。中には、「みんなでしゃべっていると思い出してきた」という人も。
「認知症予防には人との触れ合いが大事です」と看護師であり社会福祉士、介護支援専門員でもある式さんは話します。
「コミュニケーションをとって人と話すこと、聞くことが、忘れていたことを思い出すきっかけになります。話すだけではなく、人の話を聞いて交流することも脳の活性化に良いことなのです」
「思い出語りの会」では体操なども行います。掃除機かけなど日常の動きを取り入れ、歌に合わせてタオルを使い、みんなで体を動かします。ほかに歌の合唱やクイズなどで交流。また希望者が俳句や朗読、ピアノ演奏などを発表する機会も。
「予防も必要ですが、たとえ認知症になっても周りがあたたかくいてくれること、受け止めてくれる場所があることが大切」と式さん。「思い出語りの会」では、認知症になった後も周囲が理解して関わり合えるようにと、いつも参加者に話しているそう。
「いろいろな人と交流することで、多くの人に前向きな気持ちになってもらいたいですね」
問い合わせは、つるかめ笑顔クラブ代表の式さん=TEL:080(1107)9226=まで