宇治茶にまつわる、今とこれから

成分や品質を調べる研究の場

  • 建物に使われている木材はすべて京都府産です

  • 神田さんが「審査室」での鑑定の様子を再現。茶葉の手触りを確かめます

時代とともに、宇治茶の研究も進んでいます。

訪ねたのは「京都府農林水産技術センター 農林センター 茶業研究所」(宇治市白川中ノ薗1)。宇治茶の栽培・製造技術の開発、化学成分の研究、新商品開発などを手掛けています。京都府による「お茶の京都」プロジェクトのシンボルとして、昨年リニューアルオープンしました。

「11人の研究員が在籍しています」と、所長の神田真帆さん。同研究所は見学もOK。まずは見どころだという「オープンラボ」を案内してくれました。リニューアルにより、ガラス張りの開放的な空間になったそう。

「新商品の開発や成分の分析などをするスペースです。最近では、ポリアミンというタンパク質の合成に関与する成分について研究する職員も。大学などとも連携をしています」

「審査室」はお茶の品質を確かめる場所です。気になるのは、壁が〝黒い〟こと。どんな理由があるのでしょうか。

「茶葉の色を確認する際の妨げになる、天井窓からの光の反射を防ぐためです。そのほか形や香り、味なども審査し、品質を評価しています」

建物の隣には茶園が広がり、品種の育成や栽培方法の研究が行われています。

見学希望は随時受け付け。10日前までに電話=TEL:0774(22)5577=で申し込みを。

  • 「オープンラボ」では研究員が分析結果をチェック

  • 3月下旬の茶園の様子。名前が付いていないものを含め、全部で200種ほどが栽培されているとか

土蔵と茶園が宇治の歴史を伝えています

茶園の奥にあるのが土蔵。写真は3月に撮影

JR「宇治」駅南側の市街地。家や店が立ち並んでいますが、かつてはこのエリアにも茶園が広がっていたといわれています。

その風景が現在でも残るのが、本町通沿いにある寺川勝之さんの茶園。寺川さんの妻の泰子さんによると、「茶園と土蔵が一体となった景色が特徴。土蔵は、昔は茶工場だったようです」とのこと。江戸時代中期以前に作られたとみられる茶工場は明治時代に改築、今は蔵として利用されています。

茶園越しに蔵が眺められる光景は、どこか懐かしい雰囲気。この景観が宇治の茶業の生業としての歴史と文化を伝えているとの評価を受け、このたび宇治市の景観重要建造物の第1号に指定されたのです。

4月から5月は新芽に当たる日光を遮るため、茶園に覆いがかけられます。

「覆下(おおいした)栽培は、宇治茶独特の栽培法です。江戸時代の絵図にもこの蔵が描かれているそうで、聞いて驚きました。これからも、蔵と茶園を守っていけたらと思います」

「宇治茶バス」はこの1台のみ。イベントなどでも活用予定

ハート形の窓は、宇治田原町にある正寿院の「猪目窓」がモチーフなのだとか

乗車すると、そこには〝茶室〟が! 京都府南部「お茶の京都」エリアの魅力を発信するため、4月から「宇治茶バス」が運行を始めています。

同エリアを走る京都京阪バスの路線バスとして登場。まず目を引くのは、車体に描かれた茶つぼや茶畑の風景です。車内後方には、〝黄金の茶室〟をイメージした対面式の座席も。茶つぼの展示もあり、まさに〝茶室〟。全ての座席に畳の模様をあしらっています。

基本運賃で乗車可能。通常の路線バスとしてのほか、11月24日(日)までの日曜・祝日は京阪「宇治」駅から宇治田原町「奥山田正寿院口」行きの路線バスとしても使用されます。

金や銀のマークの〝プレミアム〟
宇治玉露に注目を

「プレミアム手摘み玉露」のマーク

〝プレミアム〟な宇治茶の目印に。京都府と京都府茶業会議所では、2月に「プレミアム宇治茶」認証制度を創設。「玉露」の認証がスタートしています。質の良さが保証された「プレミアム玉露」には銀色、手摘み100%の「プレミアム手摘み玉露」には金色のシンボルマークが付けられているとのこと。店に並ぶ宇治玉露をチェックしてみて。

京都先端科学大学 バイオ環境学部 
食農学科 教授 藤井孝夫さん

地元だけではなく、全国、そして世界からも人気の宇治茶。宇治茶などの研究を行っている、京都先端科学大学バイオ環境学部食農学科教授・藤井孝夫さんに、話を聞きました。

「宇治茶が注目されるきっかけとなったのがスイーツ。20年ほど前から、お茶がお菓子に使われ始め、特に宇治茶スイーツの開発が進みました。加工用の製茶の作業を効率化するため、機械摘みのお茶が増えたのもこの頃です。最近は宇治茶全体の質が向上し、加工する場合も、お茶のおいしさがより求められるようになっています。

リーフ茶(※)を飲む人は昔に比べて減っていますが、一方で品質やいれ方にこだわる人は増えていると感じます。いろいろな種類やいれ方を試して楽しんでもらうことが、宇治茶のさらなる発展につながるでしょう。

近頃は世界中から、茶畑の景観を楽しみに観光客が訪れています。今後、宇治茶を取り巻く環境がどのように変わっていくか、注目してください」

(※)茶葉から入れるお茶のこと

このページのトップへ