君嶋佑果(ゆうか)さん
「学生時代、そう大事ではない予定を詰め込んでいました」と話す、社会人1年目の君嶋さん。
「入学時、新しい環境になって忙しく、飲み会も多かったんです。初めは新鮮で楽しかったのですが、だんだんと参加が義務的に。体調も崩しがちになった時、友人に『好きにしたら良いじゃん』と言ってもらえて気持ちが楽になりました」
それから君嶋さんは1人で飲みに行ったり、新しくバイトを始めたり、自分のために時間を使うように。「そうしているうちに、大切にしたい人が分かりました。断る勇気を持つことで、有意義に過ごせています。周りも慣れて理解してくれるようになりました」
就職後に気付いたことも。「社会人にとって限られた休日は貴重。働く日、楽しむ日、ストイックに休む日とメリハリをつけることで満足感も得られて、本当の意味で心を休めることができています」。何もしない自分だけの時間も大切にしているそうですよ。
上村(かみむら)真衣さん
上村さんは夜型の生活を改めたそう。「前の職場は自宅から徒歩5分。午前8時30分に起きても間に合うほど余裕があったので、夜はテレビや録画したドラマを何となく見て過ごしていました。寝るのは毎日、深夜2時」
しかし、昨年夏に転職、朝から1時間半かけて電車で通勤することに。
「午前6時過ぎには起きないといけないので、夜は早く寝ないとつらくなってきて。最近は午前0時になる前に、もう眠たくなります」
夜活動するタイプから一気に朝型に。長い通勤時間も活用していて、「車内では読書を楽しんでいます。図書館や書店で本を探すのも最近の楽しみ」だとか。
「会社に着く時間にはすっきり目覚めて、始業もスムーズに。休日も早めに目が覚めて、予定がなくても一人で出かけることが多くなりました。用事があっても朝に済ませられるので、一日が充実しています」。今後も朝型の生活を続けたいと話してくれましたよ。
清水かおるさん
「〝焦り〟の気持ちから卒業しました。きっかけは特になく、50歳を超えて、ふと最近は焦っていないなと気付いたんです」と清水さんが穏やかに話します。
「最近は、体調が悪い時や日があっても、いつかは良くなると思って焦らずに、自分ができる最善のことをするように心掛けています。自分がいくら頑張ってもどうしようもないこともあります。若い頃は『自分のことは自分の力だけで何とかしなければ』と思っていましたが、無理に解決しようとせずに、周りの人や状況などにも任せてみようと今は身軽に考えています」
周りを見渡す余裕が出たことで知ったことも。「住んでいる洛西地域は自然豊かで野鳥も多く、自宅の庭に飛んでくる姿を見ると心が癒やされます。20代の頃も近所に住んでいましたが気が付かず感じていなかったので、この年齢だからこそ得られるものもあるのだなと。大切にしたい心持ちです」
安井美起さん
「過保護を卒業した」という安井さん。きっかけは、現在小学2年生の京雅君が通っていた、保育園の先生の一言でした。
「入園前、公園の遊具は落ちたら危ないと砂場でだけ遊ばせていて。保育園では、できることを増やしてあげたいと思いつつ、毎日心配でした。『遊具で遊べていますか』『プールの水が顔にかかると嫌がるのですが』など、先生に相談して親身に答えてもらっていました。ある日、先生が『できなかったり怖がったりするのはお母さんのせいですね』と。そう厳しく言ってくれたことで、私の心配が息子の成長の妨げになっていたと気付けました」
友達と一緒にジャングルジムに登る京雅君の姿を見て、心配し過ぎず周りの声を聞くことも大切と思えたそう。小学生になった今では、近所の祖母の家へのおつかいも1人で行けるように。
「親離れは寂しいけれど、たのもしい。将来は広い視野で好きなことを見つけてほしいです。そのためにも、しっかりと見守り、口を出し過ぎないように息子の可能性を伸ばしてあげたい」
西谷智美さん
3歳の河澄美(かすみ)ちゃんともうすぐ1歳になる泰河(たいが)君、2人の幼い子どもを育てる西谷さんは、〝きっちりとした雑事〟を卒業。
「私は雑事もしっかりと、計画を立てるタイプなんです」と西谷さん。「毎日夜までに部屋を片付けたりしたいのですが、子どもが生まれてからは余裕がなくて。次の日にできることは次の日にすれば良い、期限を決めて急ぐ必要はないと思い直しました」
家族が物を踏んで、けがをしない程度に片付けるなど、最低限のルールで工夫しているとか。思うようにいかないことも「マイナスに考えても仕方ない。できなくなったのではなく、しなくなった」と前向きにとらえます。「子どもに怒ることが減ってエネルギーを無駄に使うこともなくなりました」
そんな西谷さんのポジティブな気持ちが通じてか、河澄美ちゃんが自主的に片付けを手伝うようになったのだとか。「ご飯の支度中に率先して片付けてくれて、ありがたいです」
取材を終えて─
「アンケートで〝卒業〟という言葉を見たとき、すぐに『私はこれ』と思いました」と話してくれる人が多かったのが印象的でした。年齢や環境にかかわらず、〝卒業〟とは新たなスタート地点に立つことなのだと実感しました。