京都の紅葉といえば、桜と並び、観光の目玉の一つ。これからの時期、その美しさをめでに多くの旅行者が訪れます。では、なぜ京都の紅葉はこれほどまでに人をひきつけるのでしょう。5人の専門家が考える人気の理由とは。
落葉樹は、葉を落とす準備の一つとして、気温が下がると葉と枝の間の水分や栄養のやり取りをストップ。すると、葉が昼間に太陽の光を浴びて光合成で作った糖が残ったままになり、この糖の化学変化によって赤い色素である「アントシアニン」が作られます。これが紅葉です。
紅葉や黄葉は、樹木の葉が落葉という老化現象を迎える前に生じる生理作用。ただ、葉の色が緑から赤に変化する詳しい仕組みは、まだ謎です。(解説/松谷茂さん)
四季折々の京都の表情を撮影する写真家・水野克比古さん。生まれ育った京都を拠点に写真家として活動をスタートさせたのは、1969年秋、紅葉のシーズンでした。当時は、写真がモノクロからカラーへと移行しだした時代。
「カラー写真は色による多彩な表現が可能なので、紅葉はぴったりの題材。青モミジが徐々に色を変化させて赤く紅葉する様子や、〝紅葉〟といってもさまざまな赤があることが魅力でした」
撮影を続けるうち、水野さんはもっと素晴らしいことに気付いたそうです。
「京都の紅葉の名所というとほとんどが寺社。町家の小さな坪庭にモミジの木が植えられていることも多いですね。そういった人が作った建築物や庭が紅葉という自然とうまい具合に調和しています。人と自然の共生というのでしょうか。これが、京都ならではの紅葉の美しさだと思います」
京都の紅葉を、写真家の目で見つめ続けて50年。「昔より、〝紅葉美〟は進化している」と言います。
「たくさんの人が注目する京都には、庭園や植木の専門集団がいて、常にメンテナンスをしています。手を入れたばかりのまっさらな美しさ、長く大切にされているからにじむ美しさ。そんな多種多様な美しさを包括しているのが京都。だからこそ、国内外の人たちが京都の紅葉を求めるのだと思います。私が見ている50年の間に、モミジはさらに美しくなっている気がしますね」
水野さんの
永観堂(京都市左京区)、東福寺(京都市東山区)、金戒光明寺 (京都市左京区)