生活力アップに向けて子どもが初チャレンジ

〝紙の地図を読んで目的地に行く〟挑戦

目印を確かめながら、進む道を探しました

地図を見ながら土地勘がないという山科区を歩いたのは、小学5年生の源蓮翔(れんと)くん。出発地点は地下鉄「椥辻」駅。東野公園、山階小学校を経由し、徒歩20分程度の場所にある山科図書館を目指しました。

現在地や進むルートが表示されるスマートフォンアプリの地図などとは違い、自分で位置を確かめなければならない紙の地図。蓮翔くんは、「椥辻」駅前で「方向が分からない」と、早くも地図とにらめっこ。しばらく周囲を見回して発見した「新十条通」の標識と山科区役所がヒントになり、「左が北だ」と把握します。

目的地までほぼ直線につながる道を進むと決めたよう。そのルートを歩き始めたはず…でしたが、実は進んでいたのは1本東側の外環状線。

数分後、通らないはずのファストフード店を見て「違う道だ」と気付いた蓮翔くん。「でも方角は合ってるみたい」と地図で確認。左折し、決めた道へと軌道修正します。

出発から約10分で、東野公園に到着。地図にも慣れてきたのか、目印も見つけ始めます。「新幹線の線路があるから、もう少し」「川を渡れば見えてくるよ」。確認しながら進み、山階小学校にたどり着きました。

ここまでくれば、あと一息。酒店のある角で「ここを右!」。スタートから約30分、山科図書館に到着です。

「始めは迷ったけど、地図の読み方も分かってきた。次はもっと難しい道に挑戦してみたい」

〝公衆電話を掛ける〟挑戦

話すことを考えておかないと、時間切れになるんだ

「小学生のときから携帯電話を持っていたので、公衆電話を使う機会はなかったです」と、中学3年生の光田萌音(もえね)さん。自宅近くの公衆電話へと向かいます。

「近くで見るのも初めて。これがテレホンカードを入れるところ? お金は…ここだよね。とりあえず20円くらい入れてみようかな」

携帯電話なら相手の電話番号を覚えていなくても掛けられますが、公衆電話だとそうはいきません。メモを見ながら受話器を上げ、お母さんの携帯電話番号を押します。

ところが、「あれ? 掛からない」。どうやら、ボタンがうまく押せなかったよう。ゆっくり押し直すと、今度はきちんとつながりました。

お母さんに「ちゃんと使えたよ」と報告していると、会話の途中でタイムリミット。約2分間の通話時間に「短かった!掛ける前に言いたいことを考えておかなきゃいけないんだ」と分かった萌音さん。

「受話器は想像よりも重かった。ボタンも意外と押しごたえがあってびっくり。今日は初めてで戸惑ったけど、これからは焦らずに掛けられると思います」

災害時や携帯電話の充電が切れたときなど、公衆電話が役立つシーンがあるかもしれませんね。

大人の手本やフォローが、子どもの成長につながります

先生

京都ノートルダム女子大学 現代人間学部心理学科
教授 高井直美さん

「子どものころの成功体験は、新たな挑戦につながります」とは、京都ノートルダム女子大学の教授・高井直美さん。大切なのは、大人のサポートだといいます。

「成功に導くため、まずは手本を見せるのもいいですね。失敗した場合でも、大人のフォローがあれば、くじけずに再挑戦できると思います」

コミュニケーション力のほか、日常生活におけるスキル、そして総合的な社会性を身に付けることが、自立して生きるためには必要とのこと。

「総合的な社会性を育むポイントとなるのがセルフコントロール。トラブル時に冷静に対処したり、自分の欲求を抑えることです。難しいですが、周囲の大人の温かいサポートを受けながら、不安な気持ちを乗り越える経験を積んでもらえたら」

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