最近、テレビや雑誌で耳にしたり、見かけたりする〝AI(エーアイ)〟というフレーズ。〝Artificial Intelligence(アーティフィシャル インテリジェンス)〟の略で、〝人工知能〟のこと。そう聞いてもいまひとつピンとこないですよね。私たちの生活を快適にするものというイメージはありますが、実際のところ、どういうものなのでしょう。
教えてくれたのは
京都大学大学院 情報学研究科
知能情報学専攻 教授・西田豊明さん
「テクノロジーにはいい面と悪い面があるものです。注意点を認識したうえで、社会を良くするAIの活用法を考えていきましょう」
訪れたのは、京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻の教授・西田豊明さんの研究室。机の上に置いてある円筒状の物体に、西田さんが「オッケー、グーグル、日本で一番高い山は?」と話しかけると、「日本で最も高い山は富士山3776メートル、北岳3193メートル、そして穂高岳3190メートル」という音声が聞こえてきました。
次に、記者のスマートフォンiPhoneに、「ヘイ、シリ」と呼びかけてから質問をすると、こちらも返事をしてくれました。
これらはAIスピーカー(またはスマートスピーカー)の「Google Home」と、音声アシスタント「Siri」。どちらも、今回のテーマである「AI」なのです。
「翻訳ソフトにもAIが活用されています。入力した文章を訳すだけではなく、会話の音声を聞きながら違う言語に音声で訳してくれるものも開発されています。そのほか、手書きの文字の内容を判別する、医療現場で画像診断をする、農作物の収穫時期や株価の動きを予測するなど、さまざまな分野でAIが取り入れられています」(西田さん)
では続いて、AIに関する疑問を西田さんに解説してもらいましょう!
Q1そもそもAIとは?
A人間のように、思考できるコンピューターです
「AIは、計算をはじめとする機械的な情報処理のための道具として生まれたコンピューターを、人間のように賢くしたいという動機から生まれた技術です」と西田さん。
人間のように、ですか?
「例えば、『明日東京に行く』と言われたら、私たちは『出張かな』『旅行かしら』『遠いなあ』などと考えますよね。AIの仕組みを持つコンピューターならこれと同じようなことができるのです」
一つの情報(東京に行く)を与えられたら、関係がありそうな情報(旅行、出張、距離)を取り出すことができるそう。
「これが〝推論〟です。従来のコンピューターなら、何か言葉を入力した場合、それと同じ言葉が含まれているものしか検索結果として出てきません。AIとは全く違いますね」
Q2推論の仕組みは?
Aデータを〝回答集〟として活用
「昔のAIは、コンピューターに推論の仕方をプログラミングしていましたが、今のAIではコンピューターにデータを与えて答えの導き方を学習させます」
コンピューターが〝学習する〟とはどういうことでしょうか。
「ここでいうデータとは、インターネットの情報などを指しています。これらのデータに、一つの事柄〝A〟に対して同じ表現や画像である〝B〟を多く認めた場合、AとBが関わりがあると認識します」
例えば「花」をAとした場合、データ上に「きれい」というBの表現が多くあれば、「花」と「きれい」の間には関わりがあることを学んでいきます。これを〝機械学習〟というのだそう。
データはいわば回答集のようなもの。AIは、ほかの人の答えを参考に〝勉強〟して、自分の答えを見つけ出しているのです。
Q3利用する際に、気を付けることは?
A頼りすぎには要注意
AIは便利なものですが注意も必要と西田さん。
「今後、採用面接でAIが利用されるという話もあります。顔の表情を読み取って、本当のことを言っているかなどをAIが採点するのです。何年かたって、その人の働きぶりが分かってくると、『やっぱりAIの判断が正しかった』と思うことがあるかもしれません。そうなると、誰もが『AIの言うことが一番正しい』『AIに従っておいた方がよい』と思うようになってしまいます。これはとても怖い現象です。人間が『良い人材のようだ』と思っても、AIの判断を選んでしまうということも起こりえるのです」
AIに人格があるのではなく、AIを作っている企業のカラーが出るのだと西田さんは話します。「AIの判断を、何でもうのみにしてしまうのは良くないでしょう」
Q4今後、AIはどのように進化していくのでしょう
A〝何がしたいか〟によって、ますます広がりをみせるはず
「AIは比較的、簡単な設備でも研究や開発がしやすい分野です。ますます進化し、広がっていくでしょう。ですから、『人手が足りていないこの分野でAIが活用できないか』『介護や教育のこんなところで使えないか』など、〝AIで何がしたいか〟を、みなさんも考えて、声をあげていくことがとても大切です」