江戸時代に活躍した画家・伊藤若冲は、伏見区の海寶寺(かいほうじ)でふすま絵「群鶏図」を描いたのを最後に、筆を置いたといわれています。その場所で、9月9日(土)~12日(火)に、「若冲ロードの花鳥風月を求めて クラシックコンサート&スケッチ絵画展」が開催されます。若冲にちなんだ絵画や音楽が楽しめますよ。
左が海寶寺の住職・荒木さん、右が汐崎さん。コンサート会場の方丈にて。「気軽に音楽や絵画を楽しみに、足を運んでください」と汐崎さん
「海寶寺が、伊藤若冲ゆかりの場所であるといった地元の歴史、育まれてきたさまざまな文化、芸術に触れたり楽しんだり。そんな体験が、改めて伏見の価値を知ること、そして地域が豊かになることにもつながると思うのです」
そう話すのは「若冲ロードで花鳥風月を楽しむ会」を昨秋、立ち上げた、伏見在住の汐崎(しおざき)澄夫さん。
汐崎さんから思いを聞いた海寶寺の住職・荒木将旭(しょうきょく)さんは、「子どもたちにも、若冲との関わりや歴史を継承していくことにつながるのでは」と賛同。同会と海寶寺の主催で、イベントが開かれることとなりました。
スケッチ絵画展が開かれる本堂
今回のイベントの見どころの一つが、絵画展。9月9日(土)~12日(火)の4日間、海寶寺の本堂で、絵画が鑑賞できます。
注目は、伊藤若冲のふすま絵「群鶏図」。一部分のデジタル画像が、1m40cmほどのパネルに印刷して飾られます。もとは、約10mに及ぶ作品で、海寶寺に飾られていましたが、現在は京都国立博物館に所蔵されています。「若冲の絵を実物大で見てほしい」と、展示を決めたのだとか。
「地元の子どもたちの作品もあれば、さらに来場者に興味を持ってもらえるのでは」と桃山の小中学校にも出展協力を依頼。昨年、桃山中学校の1年生(現在2年生)が授業で作った、伊藤若冲のオマージュ作品約200点などが展示されます。すべて版木を彫った後に絵の具を塗って刷り上げる、一版多色木版画です。
子どもたちを指導した桃山中学校の教員・岡もと女(め)さんによると、「パワーをもらえそうな個性的で、感性豊かな作品ばかり。授業では、伊藤若冲の作品を鑑賞したり、生き方や時代背景を学んだうえで、若冲になったつもりで描いてもらいました」とのこと。
さらに、イベントに関連して「京の路地裏スケッチ会」が、8月19日(土)午前10時から海寶寺でスケッチ会を実施。画材を持参すれば、年齢を問わず誰でも参加可能です(油絵は不可)。絵画展に出展する場合は経費の負担が必要。詳細は汐崎さんに問い合わせを。
現在、海寶寺には、こちらの約10cm四方の群鶏図の写真が飾られています。イベント当日は実寸の80%の大きさのパネルで見ることができます
桃山中学校の生徒が作った、若冲のオマージュ作品を手に持つ教員・岡さん。「子どもたちも作品が飾られると聞いて、喜んでいました」
伊藤若冲の命日である9月10日(日)に行われるのは、クラシックコンサート(詳細は表参照)。
舞台は、若冲が最後に作品を描いたとされることから、「筆投げの間」と呼ばれる畳の部屋・方丈。こちらでバイオリンなどの弦楽四重奏が楽しめます。演奏するのは、若手の音楽家が所属し、お寺で定期的にコンサートを開催している「テラの音(ね)」です。
「若冲が鳥や自然を対象とした作品を多く残していることから、それにちなんだ楽曲を演奏していただきます。寺に響く音に耳を傾け、心落ち着かせながら楽しんでもらえるのでは」と汐崎さん。
さらに、コンサートの前には、住職の荒木さんによる講演も。
「桃山と海寶寺をテーマに、このあたりの地域の歴史やお釈迦(しゃか)様についてお話しします」(荒木さん)
芸術や地域の歴史にも触れられそうなイベントですね。