堀川二条を東に入った場所にある「Cafe&Gallery隠on(おん)」。6月にオープンしたこちらの3階に、禅の研究室があります。毎週水曜日には、市民講座を実施。禅に関心を持つ人たちが集まっていますよ。
市民講座が開催されている研究室を訪ねると、熱心に講義に耳を傾ける15人の参加者でいっぱい。今回は、妙心寺退蔵院所蔵の国宝・水墨画「瓢鮎図(ひょうねんず)」が取り上げられていました。禅問答をモチーフにした作品です。
「〝鮎〟は中国語だと、アユではなくナマズのことです」と解説するのは、研究室を開設した芳澤勝弘さん。花園大学国際禅学研究所の顧問を務めています。
「瓢鮎図のテーマは『ヒョウタンでナマズを捕まえることができるか』。つまり、挑戦状ですね。上に書かれた31の漢詩は、問いに対する禅僧たちの答えです」
次回はこの漢詩を詳しくみていきましょう、との言葉で講座は終了。…のはずが、その後も「なぜ瓢鮎図は妙心寺に所蔵されている?」「国宝第1号に選ばれたものとは?」などの話題で盛り上がります。
以前、大学で芳澤さんの講義を受けていた人、禅に興味があって来た人と、参加者の顔ぶれはさまざま。
「気軽に集まれるすてきな場所。講座もとてもわかりやすいです」とは、開始当初から参加している津野英男さん。
芳澤さんの教え子でイタリア人のオズワルド・メルクーリさんも、「芳澤先生によって解き明かされる瓢鮎図の謎は興味深いです。これからもさまざまなテーマで、皆さんと学んでいけたら」と話していました。
昨年、花園大学国際禅学研究所顧問となり、時間に余裕ができたという芳澤さん。
「これまで、聴講生として大学に来る市民を多く見てきました。そんな人が禅について自由に語り合える、大学でも寺でもない場をつくろうと考えたんです。イメージは昔の〝私塾〟です」
私塾とは、江戸時代に開かれていた私設の教育機関のこと。
「参加者の皆さんには、禅に限らず、関心のある分野を追究してもらえたらと思っています。それぞれの研究成果を講座で発表するのもいいかもしれませんね」
芳澤さんの専門は、江戸中期に活躍した臨済宗の僧・白隠慧鶴(はくいんえかく)の研究。2階には、白隠の禅画や書、約10点を展示するギャラリーがあります。
禅画に描かれている人物は、ぎょろりと目をむいていたり、楽しげな表情だったり。どんなメッセージが込められているのか、気になる作品ばかりです。
「禅画は白隠が教えを伝えるために描いたものです。今後は月1回程度、展示を解説するギャラリートークも行う予定。気兼ねなく足を運べる空間にしていきたいです」
市民講座開催時以外も、ギャラリーは見学可能。料金は800円(ワンドリンク付き)。午前11時~午後5時、月休。