小さいとき、学校や地域の行事で人形劇に親しんだという思い出がある人も多いのでは? そんな記憶がよみがえりそうな催しが開かれます。それが、「第一回 京都・うずまさ 人形劇フェス」。来月の土曜日・日曜日の4日間は、子ども時代に戻って楽しんでみませんか。親子で出かけると、その面白さを子どもたちに伝える機会になりそうですね。
ステージに設置された、黒い布を被せた箱形の舞台。そこに現れたのは、おじいさんとおばあさんの人形です。2人の間にあるのは、まんじゅうの乗ったお皿。そこに、泥棒の人形もやってきて―。黒子になった劇団員が、手を上下左右に動かしながら人形を器用に操っています。
取材時、「少しだけやってもらえませんか」という記者の言葉を受け、「人形芝居くろずきん」の2人が見せてくれたのは「だんまりくらべ」。ほんの1シーンでしたが、くすりと笑える内容と真剣な芝居にぐっと引き込まれました。
催しの会場は、太秦にある「KYOTO ART THEATRE URU」。丸太町通に面した「登喜和野会館」の2階です。こちらで、「三匹の子豚」や「ブレーメンの音楽隊」などを脚色した物語や、オリジナルの人形劇が披露されます。中には、古典落語を題材にしたものもあるのだとか。
「プロとして50年以上活躍する人から、今回初めて観客の前に立つ人まで幅広くそろいます」とは、人形劇団出身の舞台監督で、同会場を運営する吉田宇留(うる)さんです。地元・右京区で活動する劇団をはじめ、京都市や長岡京市の劇団も参加。枚方市、奈良市などの劇団も合わせると、4日間で20組ほどが出演します。
「子どもも楽しめるよう、一つ一つの時間は5~25分と短めに、分かりやすいセリフで作ってもらっています」
劇で使うネズミやキツネ、カラスなどの人形から、自前のラジカセで流す音響まで、すべて各劇団員が作ったり編集したものだそう。人形劇に温かさを感じるのは、こうした“手作り”の魅力からかもしれませんね。
「劇場も小さく、マイクも使わないため、独特の臨場感を感じられると思います」(吉田さん)。時には、外から突然聞こえた救急車のサイレンの音や、観客席の赤ちゃんの泣き声を即興で劇に取り入れることもあるとのこと。ハプニングも演出に加えるなんて驚きです!
演目は、人形劇のほかに、紙芝居、腹話術、ジャグリングなども。演劇後は、舞台のそばにある楽屋で、出演者と交流もできるそうですよ。
このイベントを企画したきっかけは、吉田さんのある思いでした。
「昔は各地域に小劇場がありましたが、最近は減少しています。行事で人形劇を呼ぶ学校や団体も少なくなって。もう一度、人形劇を気軽に見られる機会をつくれたらと思ったんです」
そこで話を持ちかけたのが、京都を中心に人形劇の普及を目指して活動する「京都人形劇センター」でした。
「京都は個人で活動している、小さな劇団が多いんです。そんな人たちが集まって発表できる機会になれば」と、同センターも賛同してくれたそう。
今後も、同様の親子向けの人形劇や、大人向けの内容なども予定しているとのこと。親子で人形劇に親しめる場が、太秦で育っていきそうですね。