個人が運営する図書館を知っていますか。北区で昨年の春、「かめちゃん文庫」「梟(ふくろう)文庫」が開館しました。規模は小さいものの、主宰者の夢は大きく広がります。ゆっくりと読書をしたり、来館者と交流しながら、その思いを共有してみては。
かめちゃん文庫
カラカラと引き戸を開けると、「いらっしゃい」というスタッフの声。普段は塾の教室として使われる部屋の一角には大きな本棚があり、絵本や図鑑、マンガなどが数百冊。取材日は、1歳から小学校2年生までの子どもたち10人と、そのお母さんたちの姿が。借りていた絵本を手に部屋に駆け込んでくる幼い男の子がいたり、友達はいるかなとひょいと中をのぞく子、折り紙を教わる子もいます。
「読み聞かせもするのですが、年齢がまちまちなので皆がそろって座るように促すことはありません。でも、部屋の隅っこで遊びに夢中になっている子も次第にチラチラとこちらを見て、話を聞いていたりもするんですよ」とは亀田十未代(とみよ)さん。
「かめちゃん文庫」は38年間、保育士を務めた亀田さんが2016年4月にオープン。実は30年ほど前にも、同じ場所で小さな図書館を開いていたのだそう。出産、育児などで多忙になり7年で中断しましたが、仕事をリタイアした今、復活。当時の仲間も含めた「ベテラン母さん世代7人で始めました」と亀田さん。保育園の副園長や言語聴覚士、元書店経営者、主婦、さまざまな経歴を持つメンバーが、子どもたちが絵本との出合いを通して心豊かに育ってほしいと運営に関わっています。
梟文庫
「いろいろな人が集えるコミュニティースペースを作りたいと思ったことがきっかけです」と、「梟文庫」を始めた理由を話すのは世話人・西尾美里さん。もともと本好きだった西尾さんが、この願いをかなえるために選んだのが図書館だったそう。知人から借りたマンションの一室を家族や友人とともに改装をして、昨年の5月にスタートしました。
蔵書のテーマは「生活」。主に料理や手芸、教育、医療、福祉に関する書籍が「大人の本棚」に並びます。多様な本と出合える機会も大切にしたいと、会員のお気に入りの一冊を貸し借りできる「かしぼんコーナー」も最近、登場しました。
部屋の奥には絵本や児童書がそろう「子どもの本棚」が。取材に訪れた日は、この本棚の前でテーブルを囲み“あみものカフェ”が開催されていました。これまでにも「味噌作り」「羊毛フェルト体験」といった催しを実施。ときには、屋外で「自然科学ワークショップ」を行うこともあるそう。5月には、お茶会や、子ども服や本の交換会といった、通常より大きなイベントも予定されていますよ。