先月末、下京区菊浜学区で、「住みずみ菊浜かるた」が完成。かるたと名前がついていますが、絵札を取り合うおなじみの遊びのためのものではないんです。実はこれ、町づくりの活動報告書なんですよ。
鴨川の西岸、高瀬川に沿って五条通から七条通に延びる菊浜学区。町家など、古い建物が数多く残る地域です。 折り畳まれている「住みずみ菊浜かるた」を開くと、「ごきげんさん おはようさんは 基本の『き』」「回してください回覧板 目と目が合えば、なおよろしおす」といった句が。A3サイズの紙の両面に、合計28句がプリントされています。京言葉がやわらかい雰囲気を演出しています。
このかるたを制作したのは、「菊浜まちづくり推進委員会」。体育振興会や少年補導委員会、消防団など、地域に関わる諸団体により、2015年1月に立ち上げられました。
同会の目的は、「菊浜に活気を取り戻すこと」とは、会長の竹田宏三さん。その背景には、人口の減少と住民の3人に1人が高齢者という地域の事情があります。こういった問題を解消するために同会が主体となり、地域の人たちとともに意見交換会を重ねてきました。「地域コミュニテイー」「高齢化」「子育て」「防災」「防犯」「空き家」「環境」といった幅広いテーマについて話し合ってきたそうです。
「地域住民にその報告をして、町づくりに少しでも関心を持ってもらいたい。ただ、読んでもらえるものでないと意味がない」。そう考えた会のメンバーたちが思いついたのが、「住みずみ菊浜かるた」だったのです。
メンバーの一人で、町歩きのガイドを務めることもある上村隆明さんは、「菊浜には、花札や国産トランプを初めて製造した山内任天堂、つまり現・任天堂の旧本社社屋がありました。そして、手刷り花札の松井天狗堂もここに店を構えていました。かるたと縁のある土地柄ということでイメージをふくらませたんです」。
意見交換会で出された声を集約し、かるたに収める内容を吟味する中で、実際に絵札を取り合って遊ぼうという意見もあったそうです。
「ですが、大切なのは手元に保管して目を通してもらうこと。それで、町づくりへの思いや活動などを詠んだ句を、かるたサイズのコマに載せるという形になりました」
折り畳み式であることもポイントだとか。
「これなら、『何かな』って気になりそうでしょう?」と竹田さん。手に取ってもらうための作戦なんですね。「かるたから、町に少しでも関心を寄せてもらいたい」という気持ちが伝わってくるようです。
かるたは、学区内の各家庭に配布されるほか、菊浜学区の情報が紹介されている菊浜連合会のホームページ「京都・菊浜へようこそ」(http://kikuhamarengoukai.wixsite.com/kikuhamarengoukai)からダウンロードできます。自分たちが住む地域の町づくりを考えるきっかけにもなりそうです。