ページをめくると現れる漢詩の数々。昨年10月、大山崎町の女性2人が漢詩の作品集「風雅双韻抄」を作りました。宝積寺や天王山といったスポットが詠まれた漢詩から、大山崎町の魅力が再発見できるかもしれませんよ。
「風雅双韻抄」の著者は前田正子さんと加藤初恵さん。10年ほど前から、「長岡京漢詩作詩研修会」に参加し、創作活動に励んできました。60首ずつを収めた今回の作品集の中では、日常のひとコマなどとともに大山崎町の風景が詠まれています。
二人がともに題材としたのが宝積寺です。上の左の写真に記された漢詩が加藤さんの作品。
「山門の辺りの、美しい春の情景を表現しています」(加藤さん)
前田さんは節分祭、秋の茶会、そして閻魔(えんま)堂を取り上げた3作を収録しています。
「季節ごとに違った風景が見られます。まなざしが鋭くて印象的な、閻魔堂にまつられている閻魔大王を詠みました」
宝積寺の写真の右側にあるのが、〝山伏の大日さん〟の写真と、前田さんによる漢詩。阪急「西山天王山」駅の南側、山伏という地区の田んぼに囲まれた森にあるほこらに、大日如来地蔵がまつられています。
「地元の人にもあまり知られていない場所です。ここに伝わる昔話も盛り込んでみたんです」(前田さん)
江戸時代、この場所に住む人の家が火事で焼け、土地を売ったというのがその昔話。
「新たな土地の所有者の夢に大日地蔵さんが出てきて『元の人のところに返してほしい』と言ったのです。結局元の持ち主に土地は返されました。大日地蔵さんが何か語りかけているのでは、そんな思いを表す漢詩です」(前田さん)
そのほか、大山崎町歴史資料館に展示されている「信貴山縁起絵巻」(一部・複製品)や、長岡京市から大山崎町を通って淀川に合流する小泉川、天王山を眺めた景色や、その山頂を題材にした作品も。
「大山崎町は自然や歴史が残る場所。日々の生活の中でも、漢詩のアイデアが浮かびます」と加藤さんは話します。
共同の作品集ということで、二人の作風や目の付けどころの違いも見どころ。加藤さんは心情がよく表れた漢詩が多いとのこと。一方、前田さんは歴史を踏まえた作品が目立ちます。
「『大山崎ふるさとガイドの会』でのボランティアガイドの経験も作品に生かされていますね。大山崎町は古くから風光明媚(めいび)な土地として文化人から愛されていました。平安時代、嵯峨天皇が編さんした漢詩集『文華秀麗集』にも、大山崎町の景色が詠まれています。町の魅力を多くの人に知ってもらいたいです」
「風雅双韻抄」は、大山崎町立中央公民館(大山崎町円明寺夏目26、阪急「西山天王山」駅から徒歩約15分)の図書室で閲覧可能。問い合わせは前田さん=TEL:075(957)5856=へ。