京都府南部を舞台にした映画「ごはん」が、1月23日(月)〜27日(金)に上映されます。米農家を継ぐことになった女性の奮闘や成長、親子の絆を描いた物語。城陽、伏見、宇治、久御山で行われていた撮影をのぞいてきました。
稲穂が黄金色に輝く田んぼに響き渡る「本番! よーいスタート」の声。主人公・ヒカリが、実った稲穂を眺めながらうれしそうにほほ笑みます。そんな映画「ごはん」のワンシーンが、昨年10月下旬のある日、伏見区・宇治市・久御山町にまたがる巨椋池土地改良区に広がる田んぼで撮影されていました。
主人公のヒカリは、東京で派遣社員として働く女性。父の訃報を受け、実家の京都へと戻ります。父は、付近の農家30軒分の田んぼを請けおっていた米作り農家。それらを突如引き継ぐことになったヒカリが、豪雨や機械の故障などの度重なる試練を乗り越える中で見つけたものとは―。
監督の安田淳一さんは「『百姓は稲を育んでふるさとを守ってきた』というせりふにもある通り、田んぼは先祖代々、農民たちが知恵を絞り、戦いながら残してくれた奇跡だと思います。主人公の姿を見てそんなことを感じ、一杯のごはんへの感謝の気持ちを持ってもらえるのでは」と、作品への思いを語ってくれました。
ところで、そもそもなぜ、京都府南部での米作りをテーマにした作品を撮ることになったのでしょうか。
「私自身、城陽の出身で、実家が米農家なのです。主人公の父親のモデルは、私の父親。私も昔からたまに農家の手伝いをしていましたが、米の育て方はよく知らなくて。もし父に何かあったらどうなるのだろうと、ふと考えたことがこの物語を撮るきっかけになっています」
「めっちゃ蚊に刺されるので、使ってください」と取材中、記者に虫よけスプレーを差し出してくれたのは、主人公を演じる沙倉ゆうのさん。
兵庫県・西宮市出身で撮影に入るまで田んぼの景色になじみがなかったという沙倉さんですが、すっかり慣れた様子です。それもそのはず、映画の撮影は、丸4年の歳月を要したのですから。
安田さんによると「映画で描いている季節は、夏から秋。田んぼを借りて撮影していたのですが、農作業の進行や稲穂の生育状態に合わせたり、天候にも悩まされたりして思うようにいかず長引きました」とのこと。
沙倉さんは、「地元の方があたたかくて、トマトとかエダマメとか『持って帰りや』って渡してくださいました。『おう、まだ撮ってるんか』と言われたことも(笑)」。
実際、取材に訪れた日も「ちょうど1年前も撮影に来てたね」と声をかけられていました。
「この辺りにお住まいの方には、地元の風景の美しさも見直してもらえると思います」と安田さん。「田んぼは、夏は青々として、秋は稲穂が透き通り、観光資源になるくらいにきれいです。時間をかけた分、その景色も美しく、納得のいくものを撮ることができました」
映画の公開日や場所については、表参照。問い合わせは未来映画社=TEL:075(602)9990=へ。