七条通を走る市電、建設途中の京都タワー。そんな明治の終わりから昭和50年ごろまでの写真が並ぶ催しが開かれます。当時のことを知る人には懐かしく、知らない人には京都の町の歴史を改めて感じられるイベントになりそうです。
「“丸物(まるぶつ)”はご存じですか? 今の京都ヨドバシの場所にあったデパートのことなんですよ」
写真を見ながらそう話すのは、下京区の稚松(わかまつ)連合会会長・鎌田髙雄さん。鎌田さんが手にする写真には、丸印の中に“物”と書かれた電飾が光る建物の姿が。12月16日(金)~18日(日)に開かれる「下京東部まちなみ写真展」に展示される1枚です。ほかにもイギリス皇太子だったエドワード8世の京都訪問、木造の小学校校舎などの明治の終わりから昭和50年ごろまでの写真が並ぶそう。
これらの写真は、下京区東部エリアの5学区(植柳、稚松、菊浜、皆山、崇仁)の昔の街並みが撮影されたもの。地域の人が大切に保管していた写真です。
今回の写真展開催の背景には、“地域の変化”が関わっていると鎌田さん。
「人口減少に伴い、6年前、5学区が下京渉成小学校区に統合されました。同時に高齢化も進み、町はすっかり静かになってしまったんです」。そんなところにニュースが飛び込んできました。崇仁地域への京都市立芸術大学の移転が2023年度に決定したのです。
鎌田さんたち地域の人たちの間に、「せっかく若者が来るのだから、地域の活気を呼び起こし、新しい住民が活動しやすい街にしよう。学区や世代を超えて地域全体を盛り上げたい」という思いが生まれたといいます。
そこで2年前、「京都市立芸術大学を核とした崇仁エリアマネジメント」が発足。5学区の自治連合会を中心に、ミーティングを重ねてきました。
「そろそろ何か形にしようということで持ち上がったのが、今回の写真展なんです」
組織の事務局の一人である下京区役所地域力推進室の岡田満紀子さんは、「だいたい大正時代から市電が町を走っていた昭和50年ごろまでに絞って、それぞれの学区で写真提供を呼び掛けました。学区以外の方も協力を申し出てくれたんですよ」と話します。
期間中は、集まった中から選定された約80枚が展示されます。京都市立芸術大学の学生による音楽演奏会もあるとのこと。
鎌田さんは、「町の思い出は住民一人一人の胸の中にあります。写真をきっかけに、地域や世代を超えて思い出話に花を咲かせてもらえたら。初めて見る人にとっては街の歴史に触れるいい機会になると思います。そこから、芸大がやって来る街の未来の姿にも想像を膨らませてもらえたらうれしいですね」。