嵐山、太秦といった名所を結ぶ嵐電。沿線の各駅にスポットを当て、周辺地域を描くスケッチ会「京の路地裏美術館(ストリートアートミュージアム)」が、毎月第3日曜日に行われています。画材道具を持って参加してみませんか。
9月下旬、嵐電「鹿王院」駅に行くと、大きなかばんにスケッチブックやイーゼルを入れた人たちの姿を発見。20人が集まっていました。「この辺りにしようかな」「私はもう少し先まで行ってみる」と、各自描きたい風景を探し、スケッチブックを広げます。
「駅周辺なら、どこを描いてもOK。それぞれの目線でおもしろい空間を切り取っています」とは、アーティストで「京の路地裏美術館実行委員会」の代表・貴志カスケさん。今回おすすめの場所と教えられ、鹿王院に向かいました。
鹿王院の門の正面にいたのは山下伸祐(しんすけ)さん。茶色のペンで下絵を描いています。
「正面を描くのは難しいのですが、挑戦しがいがあります。スケッチの合間、参加者同士で会話するのも楽しみです」
中田ゆきみさんは門の脇でスケッチ中。門を描いているのかと思いきや、隣の塀に目を付けていました。
「門もすてきなんですが、古い壁を描くのが好きで。嵐電沿線は歴史ある風景が残っていますね」
門前の通りは、東西に延びる真っすぐな道。「この道の奥行きをうまく出したいと思います」と話すのは、錦織由紀雄さん。スケッチ会の常連で、「出来上がった絵は家に張っています。娘に褒められることもあるんですよ」と笑います。
市民団体「京都アートカウンシル」が立ち上げた同会。昨年は京都の町中の通りを順にスケッチしていたそう。新たな試みとして、6月から嵐電沿線を描き始めました。
「町中とは違った風景にスポットを当てたいと考えました。嵐電沿線は昔から住宅が多い場所。古い区画や家が残る町並みを絵で記録していけたら」と貴志さん。エリアを変えたことで、変化もあったのだとか。
「新たな参加者も来てくれています。仲間が増えるのはうれしいですね」
思い思いの場所に散らばっていた参加者のうち、9人が午後3時に再集合。近くの公園で、出来上がった絵を見せ合う「合評会」が開かれました。
完成した作品を並べて一人ずつ紹介。「ちょうど稲刈りをしていたんです。その様子を描きました」「明るい色合いで、楽しそうな雰囲気ですね」といったやりとりが続きます。
鹿王院の門を描いた作品には、「うまい! でも、門をくぐった先の緑をもう少し表現しても良かったのでは」と貴志さんがアドバイス。いろいろな声が聞けるのが、合評会の魅力のようです。
絵を描くことで、地域の美しい景色にもあらためて気が付けるかもしれませんね。