人々が集まり、星や月を楽しむ―。江戸後期、そんな天体観望会が初めて行われたとされる場所が観月橋の近くにあったのだとか。11月13日(日)には、ゆかりの地と関係の深い人物の足跡を訪ねる「ふしみ散歩&観望会」が開催されます。
夜空を見ながら宇宙の神秘に思いをはせる天体観望会。
「その記述が初めて文献に登場するのは、1793年8月。伏見の観月橋のそばにあった橘南谿(たちばななんけい)の別荘・黄華堂(こうかどう)で、大阪の眼鏡職人・岩橋善兵衛が持参した自作の屈折望遠鏡を使って夜空を眺めたという記録が残っています」
そう話すのは、武庫川女子大学で天文学などを教えている株本訓久(くにひさ)さん。
この橘南谿という人物。江戸後期に活躍した三重県生まれの医師で、伏見で人体解剖を行った一方、人気エッセイスト、儒教家としても活躍しました。
「伏見は、人や物が行き交う要衝で、人々の交流も盛んでした。才能豊かな橘南谿は交遊範囲が広く、多くの友人が黄華堂に集まり、月や星を眺めて天体の話を楽しんだようです」
株本さんは1年前、仲間たちと「黄華堂再発見プロジェクト実行委員会」を立ち上げ、委員長も務めています。
「黄華堂や橘南谿のことは、伏見でもほとんど知られていません。地域を盛り上げるためにも、プロジェクトの活動を通してまずは地元の人に伝えていきたい」とか。
当時の天文学は暦の研究が中心。これに対して橘南谿は、月のクレーターや太陽の黒点といった天体そのものに興味を持ち、観察をしていた記録も残っているそう。「南谿の天体の楽しみ方は、現代の天体観察に通じるものがあります」と株本さん。
昨年、同プロジェクトでは、橘南谿ゆかりの地などをめぐる「ふしみ散歩&観望会」を初めて開催。参加者からは、「豊臣秀吉や坂本龍馬ばかり注目されている伏見ですが、橘南谿のようなユニークな人物を知ることができてうれしかった」という声も聞かれたのだとか。
同プロジェクトのメンバーで星空の楽しみ方を伝える“星のソムリエ”として活動する和田浩一さんも、南谿に魅了された一人。
「望遠鏡が珍しかった当時は、昼間に景色を眺めるだけでも楽しかったことでしょう。全国各地を訪ね歩いた橘南谿が、『伏見・桃山の観月台は山水眺望の地』とたたえたのが伏見。そんな歴史も紹介したい」と言います。
2回目となる今秋の「ふしみ散歩&観望会」は、黄華堂があったと思われる場所をはじめ、橘南谿が生きた時代と関わりの深い伏見奉行所跡や海宝寺へウオーキング。委員会のメンバーと天体談義や歴史話もできますよ。夕方からは海宝寺の境内で観望会が実施されます。
11月13日(日)午後1時30分に御香宮神社集合~黄華堂~伏見奉行所跡、大石天狗堂、伏見区役所~海宝寺~午後5時30分から観望会~午後6時30分解散。
申し込み先着20人。
大人500円、子ども200円。
申し込みはウェブ上の専用フォーム=http://npo-kakehashi.org/okado/=から。
問い合わせは黄華堂再発見プロジェクト実行委員会事務局(NPO法人「子供達と最先端科学技術の架け橋」)=TEL:075(634)8113