400年以上前、伏見城で出雲の阿国による歌舞伎が―。そんな古文書の記録をもとに、阿国のように踊りが中心の歌舞伎を披露しようという取り組みが進んでいます。主役は子どもたち。さあ、どんな舞台になるのでしょう。
9月中旬、伏見区総合庁舎のホールに、「伏見子ども阿国歌舞伎プロジェクト」の子どもたち7人が集まりました。
まずは、「あ、え、い、う、え、お、あ、お…」と発声練習。「息を吸うとき、肩が上がらないように」と指導するのは、アマチュア劇団を率いる富田信二さんです。「おなかから声を出すのって難しい」と子どもたちは、少し苦戦気味。
続いて、日本舞踊の師匠・三緒紫光(みおしこう)さんが登場。着物と足袋を身に着けた子どもたちは、曲に合わせて足を運び、扇子を広げ、一つ一つの所作を、何度も繰り返していきます。
こういった基礎練習は、来年の春の初舞台に向けて行われているもの。演目は、「ふしみの桃太郎」です。“伏見の”とは…?
その疑問に答えてくれたのが、同プロジェクトを運営する井口富夫さん。
「『ふしみの桃太郎』は、江戸時代に大阪で出版された本に収められていたおとぎ話です。物語は、娘を持つ夫婦が伏見の御香宮神社でモモを授かったことから始まります。モモは、その後、立派な男の子に成長。鬼にさらわれた夫婦の娘、つまりは姉を取り戻すため、イワシの精とヒイラギの精をお供に従えて鬼退治へと向かいます」
私たちが知っている「桃太郎」とは、少し違いますね。
「びっくりでしょ?」と笑うのは、同プロジェクト代表の岡村和枝さん。
「伏見に生まれ育った私も、初めて聞きました。物語にちなんで、公演は御香宮神社で行うことが決まっています」
それにしても、なぜ伏見で阿国歌舞伎なのでしょうか。
「歌舞伎の始祖といわれる出雲の阿国の歌舞伎は、現代とは違い、踊りが中心だったそうです。その出雲の阿国が伏見で歌舞伎を披露したという古文書があるんです」と岡村さん。
この言葉を受け、「伏見と歌舞伎の関係は、伏見城に徳川家康がいた時代にさかのぼります。江戸時代初期の古文書『当代記』によると、阿国が伏見城で歌舞伎踊りを披露しているのです」と井口さんが説明してくれました。
歌舞伎と縁が深い伏見で、阿国のような踊り主体の歌舞伎をしたいと思って立ち上げたのが、このプロジェクトなのだそう。初舞台は2017年3月19日(日)です。
「その後も、伏見にゆかりのある演目を毎年披露し、受け継いでいくのが目標です」(岡村さん)
現在、「ふしみの桃太郎」の出演者を募集中です。練習は、毎月第2・4土曜の午後3時~5時。参加費は年間2100円。次回の練習日程など問い合わせは岡村さん=TEL:075(605)0678=へ。