京都の青物問屋で生まれ育った画家・伊藤若冲(じゃくちゅう)。独自の画法を編み出し、85年の生涯を閉じるまでに数多くの作品を残しています。生誕300年の今年。市内各所で若冲の作品に出合えます。作品の題材はさまざま。「若冲といえば鶏」と思っていた人も、新たな“お気に入り”が見つかるかもしれませんね。
若冲の墓があり、毎年9月10日には命日法要が行われる石峰寺(せきほうじ)。
展示物は、同寺所蔵の「虎図」をはじめ掛け軸14幅と版画6点。ガラスなど遮る物はなく、間近で細かな筆づかいまで見てとれます。
裏山には、若冲がデザインした500体を超える石像が。約230年の月日を経てこけむし、自然と一体化した姿が魅力的。釈迦(しゃか)の生涯や“さいの河原”など8場面が表現されていますよ。
石峰寺所蔵の「虎図」。トラを見たことがなかった若冲は、中国絵画を基に描いたとされています
京都国立博物館では、羽の濃淡を墨で描き出した「群鶏図押絵貼屏風」や、歴史上の人物を描いた「六歌仙図押絵貼屏風」などを展示。
ユニークなのが、「果蔬涅槃図(かそねはんず)」。涅槃図といえば、入滅(死)後の釈迦の情景を描いたもの。でも、この絵の中央に横たわっているのは…ダイコン!
それを弔うようにカブやイモが囲みます。
青物問屋に生まれた若冲ならではの、遊び心ある作品です。
「果蔬涅槃図」 伊藤若冲筆 京都国立博物館
重要文化財「鹿苑寺大書院旧障壁画」の「竹図襖絵」
その制作に40代前半から10年間をささげたという30幅の掛け軸「動植綵絵(どうしょくさいえ)」。相国寺承天閣美術館では、この複製品を見ることができます。対となる3幅の「釈迦三尊像」の掛け軸とともにズラリと陳列。展示室の壁にコの字形に飾られています。
題材はキクなどの花やクジャクといった鳥類、50種の貝類、鳳凰(ほうおう)など。いずれも精巧で、彩り豊か。たとえば鶏は、トサカひとつとっても緻密なまだら模様、鮮烈な赤が際立っています。
第二展示室では「鹿苑寺大書院旧障壁画50面」も展示。こちらはモノクロなので、また違った趣を感じられそう。
京都市美術館では、約100点を展示予定です(一部入れ替えあり)。
東京の展覧会でも人気だった「百犬図」は、作品名からイメージできる通り、たくさんの犬が描かれ、画面を埋めつくすほど。これは〝多く見える”という錯覚効果を狙っているのだとか。そう聞くと、犬が何匹いるか数えたくなりませんか。
「百犬図」個人蔵。11月15日(火)~12月4日(日)公開
「老松鸚鵡図(ろうしょうおうむず)」個人蔵