ヒメアノ~ル
5月28日(土)からTOHOシネマズ二条、T・ジョイ京都で公開
ほほ笑ましい平凡な日常を、浸食していくトラウマの恐怖
ビル清掃会社のパートとして働いている岡田青年は、先輩の安藤が「おれは毎日恋をしている」ということばを聞いて目を丸くする。その片思いの相手はカフェ店員のかわいらしいユカだった。一方、岡田の高校時代の同級生・森田がユカをストーキングしているらしいと知った岡田は森田に接触するが、まさかそれが恐ろしい非日常の幕開けになるなんて!
映画の前半と後半とではお話の色合いが全く異なり、たわいない恋の三角関係と思えたのに、常軌を逸した連続殺人事件へと発展していく。その陰には、いじめによるトラウマがあり、それを傍観してしまった後ろめたさがある。題名はヒメトカゲに由来し、強者のえじきにされる弱者を意味するのだが、本当の強者が誰で、弱者は誰なのか。そういう判別を誰がするのかと、見た後にいろいろと考えてしまう。
原作は、古谷実のコミック。V6の森田剛のほか、濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシなど演技陣それぞれの個性が光る。巧妙な演出で、コミカルな恋愛風景とブラックな世界を組み合わせて映像化したのは、吉田恵輔監督。暴力的なシーンもあるのだが、この時代の暗部を描き込みながら、それを拭い去りたいという願いも強く感じられる問題作。※15歳未満は観賞できないR15+指定。
(ライター 宮田彩未 )