身近なスポットも、視点を変えれば一味違った魅力が感じられることも。京都をよく知る観光ガイドに、近場でおすすめの場所をセレクトしてもらいました。テーマは“出あい”。伝説が語り継がれる場所、歴史上の人物が対面した場所、素晴らしい景色が見られる場所と、ジャンル別に紹介します。ゴールデンウイークを利用して足を運んでみませんか。
叡電「鞍馬」駅を降りると、まず目に入るのは大きな赤い“てんぐ”のオブジェ。山深い鞍馬は、古くからてんぐが住むといわれています。
「てんぐとの交流が語られるのが、鞍馬寺で7歳から10年間を過ごした源義経。寺では遮那王(しゃなおう)と名乗っていました」と小嶋さん。
「義経は夜な夜な奥の院辺りへ出かけました。源氏の御曹司として平氏を倒すため、山奥で武芸に打ち込んでいたとされています」
奥の院とは、中腹にある本殿の先。根が絡み合った「木の根道」をはじめ、険しい道が続きます。足をとられないように注意しながら進んでいくと、不動堂や義経堂のある僧正ガ谷にたどり着きました。
「義経がてんぐと出会ったのが、この僧正ガ谷です」
木に囲まれた谷は、確かにてんぐが現れてもおかしくない雰囲気…。
「てんぐは義経の出自を聞き、不遇な生い立ちを哀れんだそうです。『強くなりたい』という義経の願いをかなえるため、兵法を伝授したとか。てんぐは、実は源氏の家臣団だったという説も。源氏の再興を願い、義経に武芸を教えていたのかもしれませんね」
伝説を聞いてこの地に立つと、山を駆けるてんぐと義経の姿が目に浮かぶようです。
“鴨川デルタ”とも呼ばれる、出町柳付近の三角州。東側を流れる高野川と、西側を流れる賀茂川の合流地点です。
「2つの川が出合って、これより南は鴨川となります。下鴨神社の神・玉依媛命(たまよりひめのみこと)が男神と出会ったという神話の舞台にもなっています。玉依媛命がこの付近でみそぎをしていると、上流から赤い矢が流れてきます。拾って持ち帰ると、丹(に)塗り矢という名で伝わる矢は男神の姿に。結婚して上賀茂神社の神である賀茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)を生みました」(小嶋さん)
そんな神様同士の出会いの場と知ると、なじみのある三角州も神秘的に感じられそうです。
そして、「祭りに欠かせない、あの食べ物にもゆかりのある場所ですよ」と小嶋さん。
「出町柳はいくつかある鯖街道の終点の一つ。若狭から運ばれてきた食材が集まる場所でした。中でも有名なのが、ひと塩のサバ。これを使い、ハレの日のごちそうとして家庭で作られたのがさば寿司です。サバと京都の米、相性のいい“であいもん”ですね」
このかいわいには、今もさば寿司の店が見られます。三角州の見える河原で味わってみては。