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家の前のスペースだって、〝地域の居場所〟に

山科区・清水焼団地にほど近い住宅街に、「地域の人が気軽に集まれる場所を」と、自宅前のスペースを〝居場所〟として開放している夫婦がいます。この場所への思いとは―。

「屋外なので冬と夏を除き、気候のいい季節に開いています」と田中博さん。「ゴールデンウイークあたりには、バラを楽しんでもらえる予定です」とは君江さん

道路から少し奥まった場所に、1本のパラソルが見えています。その下にはテーブルとベンチ。ここが、一級建築士事務所を営む田中博さんと君江さん夫婦が作ったフリースペースです。

「名前は特にないんです。えん側のような、みんなの居場所です(笑)」とは博さん。博さんにうながされ、ベンチに腰かけた記者。テーブルの周りに大きめの斜め格子の囲いが設置されていますが、視界が遮られることもなく、通りを行きかう人の姿も見えるので開放的ですね。

「当初は囲いはなかったんですが、実際に座ってみるとどうも落ち着かないという人がいて。かといって壁みたいな囲いだと閉塞(へいそく)感がありますから。このテーブルの場所ももっと道路に近い方が入りやすいかなと思ったりと、まだ試行錯誤の途中です」

いろいろな地域で、それぞれに合ったやり方で

取材時は、田中さんの体操サークルの仲間が来訪。趣味の話、君江さんが育てているバラの話など、にぎやかなおしゃべりが続きます。「人と会って、おしゃべりをして、楽しく過ごせるのが一番」と博さん

博さんが話す当初とは2013年ごろのことですが、このような居場所への思いを抱くようになったきっかけは約40年前にさかのぼります。

「そのころ病気で入院していたんですが、病院ってさびしいでしょう? 人と会うことや集まることの大切さを実感しました」

退院後、友人同士の集まりを主宰したり、地域の役員を積極的にするなかで、「まちの居場所を作りたい。ご近所さんが集まっておしゃべりができる場を作りたい」という思いを抱くようになったのだとか。理由の一つには、いざというときに役立つ、人のつながりをつくるためと言います。

「阪神・淡路大震災以降、特に“人のつながり”の大切さが見直されるようになりました。何かあったときには普段からのコミュニケーションが必要になってくる。そのためにも、こういった場所はあるべきだと思うんです」

今では、農作業の帰りに足を運ぶ人がいたり、近所の人が「ちょっと寄るわ」と声をかけたり、という交流もあるのだそう。

「これからは、昔からこの辺りに住んでいる人と、新しく引っ越してきた人を結ぶ場所にも育てたいとも思っています。私たちがいなくても、みなさんが自由に使ってもらえるくらいになればいいのですが」

そして、こういった場所が各地域にできてほしいと願っているという博さんと君江さん。

「私たちのスタイルは一例にすぎません。いろいろなやり方があると思いますが、それぞれの場所で井戸端会議ができる場所が生まれると、地域のコミュニケーションづくりに役立つと思います」 こちらのフリースペースは出入り自由。田中さんが不在の場合もありますが、訪れた人は一声かけて利用を。場所は、山科区川田山田6-8。問い合わせは田中さん=携帯電話:090(8367)1620=へ。

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