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身近な場所が芸術のステージに

芸術鑑賞はホールや美術館でするもの。そんなイメージにとらわれず、気軽に音楽や美術に親しんでほしいと、「サンサ芸術の杜(もり)」を企画した人たちがいます。右京区役所が入る複合施設「サンサ右京」のロビーを舞台に、コンサートや美術展示を開催。1月には、第1回となる「新春コンサート」と「小森文雄 水墨画展」が行われました。

学生たちが織りなすハーモニー

3人の息の合ったステージ

通りがかりに足を止め、そのまま聞き入る人の姿も

チェロとピアノの美しい調べが響く「サンサ右京」。右京区役所の受付終了時間を過ぎた午後5時30分、薄暗くなったロビーに多くの人が集まっていました。用意された50席ほどのいすは満席で、立ち見が出るほど。出演者のピアノ奏者・辰野翼さんも「こんなに人が集まってくれるなんて」とうれしそうです。

初開催となる今回は、パリ国立音楽院院生の辰野さんをはじめ3人が出演。まずは辰野さんとチェロ奏者・河野明敏さんによる二重奏からスタートです。優しい音色の「愛の挨拶」、リズミカルな「リベルタンゴ」と、テイストの違う曲が演奏されます。

中川郁文さん(ソプラノ)が登場すると、会場はさらに華やかな雰囲気に。水色のドレスに身を包み、高らかに歌い上げます。会場の子どもたちも、その姿に見入っていましたよ。

司会をしていた辰野さんの「次は童謡唱歌メドレー。メロディーを聞いて当ててもらおうと思ったんですが…、曲はもうプログラムに書いてありますね」との言葉には、会場から笑い声も。「さくらさくら」「春よ来い」など、「新春コンサート」にぴったりの楽曲が披露されました。

メンバーの強みが生かされた企画に

通常は美術館でしか展示をしないという小森さんの作品も、間近で見られました

「サンサ芸術の杜」の企画が立ち上がったのは、昨年11月のこと。きっかけは、地域の魅力づくりや課題解決に取り組む人の交流の場として右京区役所が運営する「まちづくりキャンバス@右京」の参加者・徳丸國廣さんの発案でした。芸術に触れる機会を身近に設けようと考え、これに松永孝之さん、西田豊さんら5人のメンバーが賛同したのだといいます。 

「スケジュールはタイトでしたが、イベント企画に慣れた人が集まったため、準備もスムーズに進みました」と、メンバーの井尻尚見さん。以前から、演劇やクラシック音楽に携わっていたのだとか。「音楽を聴きにホールに行くのは、敷居が高いと思われがち。もっと気軽に生の音楽に親しめる場をつくりたかったんです」と話します。

音楽だけではなく、美術など″芸術”全般を扱うのも特徴。アートで町を盛り上げたいという思いを持ち、NPO法人で活動している大場六夫(ろくお)さんは、美術分野で活躍します。「水墨画をコンサートステージに飾り、美術と音楽を融合しました。今後は作家とのワークショップなどもしていけたらと考えています」(大場さん)

自宅でオペラの上演や演奏会を行っている末野真利さんは、音楽家に出演を呼び掛けているそう。メンバーの強みが生かされているんですね。

「プロ、学生、区民グループなど、さまざまな人の発表の舞台になれば。『区役所は何かおもしろいことが行われる場所』と思ってもらえるよう、活動を続けていきたいです」(末野さん)

「サンサ芸術の杜」は今後、月1回企画されるとのこと。次回は2月19日(金)午後3時~。「サンサ右京」ロビーにて。京都大学交響楽団所属の学生による室内楽を実施。作品展も同時開催。問い合わせは右京区役所地域力推進室企画担当=TEL:075(861)1784=へ。

「喜んでもらえるようなコンサートや展示を、これからも考えていきたいです」と話す大場さん、井尻さん、末野さん(右から)。後ろに飾られているのは、ステージにも使われた小森さんの水墨画です

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