楽しいとき、つらいときをともに過ごし、支えてくれる〝パートナー〟。そんな人生の相棒は、夫や友達といった〝人〟とは限りません。道具や楽器、動物など、読者のパートナーを紹介してもらいました。思い出のエピソードから、その特別な関係が感じられそうです。
赤ちゃんをしっかりと支えられる抱っこひも。田鶴寿弥子さん(34歳)の育児には欠かせないアイテムです。娘のKちゃん(3歳)が生まれたときに購入し、今はKちゃんの弟・Sくん(11カ月)の抱っこに活躍しています。
「区役所で開かれた子育て講座で、先輩ママから『便利だよ』と薦められました。ほぼ一日中着けていて、もう服みたいなものです」
汗や鼻水が染み込んだ抱っこひもを洗うのは、Sくんが眠った後に。
「洗濯して翌日に備えておきます。外出時にも使うので、ケースを作ってコンパクトに持ち運べるようにしました」
ケースとおそろいの布で田鶴さんが作ったミニサイズの抱っこひもは、Kちゃんのお気に入り。取材時は、田鶴さんのまねをして、ぬいぐるみを抱っこしていましたよ。
そのKちゃんが生まれたころ、田鶴さんは育児の傍ら仕事をする生活。家でもKちゃんを背負いながらパソコンに向かい、持ち帰った仕事をこなしました。
「背中に回せば、おんぶひもにもなるんです。めげそうなときもありましたが、何とか乗り越えてきました。この3年間を思うと、抱っこひもと協力して子育てしていると言ってもいいくらい。色あせてきましたが、これからも頑張ってもらいます」
4歳でピアノを習い始めた安井日和さん(43歳)。曽祖父が買ってくれたというピアノは今年で40年を迎えますが、まだまだ現役です。
「母によると曽祖父は節約家だったらしいのですが、私のためにピアノを買ってくれました。調律師さんからは『いいピアノだね』と言われています」
曽祖父は小さいころに亡くなったので、あまり記憶が残っていないそう。しかし、そのプレゼントは心の支えとなりました。
「多感な思春期には、ピアノがうっ屈したやり場のない思いを受け止めてくれました。プロを夢見たこともあるほど大好きだったピアノですが、大学受験を期にレッスンに通うことはなくなりました」
その後、進学のために実家を出て10年ほど一人暮らしが続き、ピアノから離れた日々を送ります。「いつか実家に残してあるピアノを引き取りたい」。安井さんは、離れていてもピアノへの愛着を持ち続けていました。
念願がかなったのが、新居を構えた8年前。再びピアノとの生活がスタートしました。安井さんが弾く姿を見てピアノを習い始めたという8歳の双子の息子・晃斗くんと晃太くんが、今では毎日練習。娘の和香(のどか)ちゃん(2歳)も、おもちゃ代わりに音を鳴らして楽しんでいます。
「今は育児が忙しくなかなか時間がとれませんが、落ち着いたらジャズに挑戦してみたいです」
思い出のピアノを前に、安井さんの思いも強くなっているようです。
人によって〝パートナー〟の形はさまざま。読者アンケートで寄せられたパートナーを紹介します。
5年前、初めての出産の後、母から手紙が届きました。そこには「孫に会わせてくれてありがとう」という言葉が。思いもよらないお礼が、不安だった私を励ましてくれました。読むたびに、出産時の喜びがよみがえります。悩んだり、迷ったりしたときに読み返す、大切な手紙です。(MH・33歳)
結婚するときにもらった、実家で使っていたアイロンとは30年近くの付き合い。落として割れてしまったこともありましたが、そのたびに父に直してもらっています。父との関係もつないでくれているよう。壊れても復活するのが頼もしいです。(キティちゃん・39歳)