天空の蜂
9月12日(土)からMOVIX京都、T・ジョイ京都ほかで公開
原発テロの危機。その表と裏をスリリングな演出で見せる大作
ベストセラー作家の東野圭吾が1995年に発表した原作を、堤幸彦監督で映像化したものだが、20年の時を超え、なんと現実的な物語であることか! ここには、今を生きる人たちに問いかけるさまざまな問題が含み込まれている。原発そのものの是非はもちろん、原発によって人生を変えられた人々のこと、国家というもののあり方、見て見ぬふりをする“仮面”をかぶった大衆のことなど…。緊迫感に満ちたサスペンス要素も十分で、結末まで目が離せない。
その大事件は、あっという間の一瞬から始まった。防衛庁へ納品するはずの超大型ヘリが、何者かによる遠隔操作で原子力発電所の真上に持って行かれた。犯人からは、日本全国の原発を破棄しなければ、ヘリを原子炉に墜落させるという脅迫状が届く。ヘリの燃料が切れるまでの8時間、関係者一同は緊急対策に追われるが…。
ヘリの設計士役を務める江口洋介が次第に熱血漢へと変わっていく一方、原発の設計士を演じる本木雅弘はえたいの知れない不気味な男へと変ぼうする。怪演といってもいいほどだが、この男の過去を知った時、私たちは暗然とする。冒頭に述べた“仮面”のむごさに触れるのである。仲間由紀恵、綾野剛ほか豪華な配役陣をずらりそろえ、見ごたえたっぷり!
(ライター 宮田彩未 )