秋の七草の一つ、フジバカマ。薄い紫色の、かれんな花を咲かせます。このフジバカマの原種が絶滅の危機にあることから、守り、育てるための活動をしているのが「御所藤袴の会」です。第1弾の取り組みが、寺町通を300鉢のフジバカマでいっぱいにしようというもの。10月、丸太町通から二条通の間の寺町通が淡い紫色に染まりますよ。
「御所藤袴の会」が結成されたのは今年6月。寺町丸太町かいわいの春日学区の住民約10人が中心となっています。結成のきっかけは、会で世話人を務める馬場備子(みなこ)さんが絶滅への危機感を募らせたことでした。
「フジバカマを守るために何かできないかと思っていたときに、ふと、寺町通にフジバカマの鉢を並べたらどうだろうというアイデアが浮かんだんです。行きかう人に花の存在を知ってもらう機会になるのではないかと」
フジバカマは「源氏物語」にも登場する花。くしくも、寺町丸太町を北へ進んだところには「源氏物語」の作者・紫式部ゆかりの寺も。夢がふくらんだ馬場さんは、さっそく地域の仲間に声を掛け始めます。藪下淳子さんもそんな仲間の一人でした。
「『1000年以上前、平安時代、この辺りはフジバカマが群生していたはず。この周辺に住んでいる者として原種を守りましょう!』という馬場さんの熱意に圧倒されました」と藪下さん。こうして「御所藤袴の会」が誕生したのです。
まずメンバーが始めたのが、寺町通に展示するためのフジバカマを育てること。
参考にしたのが、以前からフジバカマの保全に取り組んでいた西京区や伏見区の団体、京都市都市緑化協会の活動でした。
育てる原種は、そのうちの一つ、伏見区の団体から分けてもらったのだそう。メンバーの自宅で栽培するほか、各自が隣近所の人に〝協力要請”。フジバカマネットワークが広がっていきました。
「ご近所さん同士で、『よく咲いてるね』『液肥はいつごろまいたらいいの?』など声を掛け合うことで、地域の結びつきにも役立っているんです」(藪下さん)と、うれしい副産物もあるのだそう。
メンバーが育てたフジバカマを含む300鉢が展示されるイベントは、「第1回藤袴アベニューてらまち」と名付けられました。
同会会長・谷芳一(よしかず)さんも、馬場さんらに負けず劣らず、熱い思いを抱いています。
「フジバカマを介して、1000年以上前の世界を感じられるなんてロマンがあるでしょう? これは地元の人はもちろんですが、観光客にも喜んでもらえるイベントになると思います。今年の1回目を無事に終えて、『秋のイベントといえば“藤袴アベニュー”』と定着させたいですね」と谷さん。
「一鉢一鉢を地元の住人が育てています。その花の美しさと香りを体感してもらうことで、“現代の都人の思い”と“いにしえの都人の思い”を感じてもらえればうれしいです」
10月3日(土)・4日(日) 午前11時~午後5時
丸太町~二条間の寺町通の両側に約300鉢のフジバカマが展示されます