「横向きやうつぶせで寝ているときは、下になったほうの皮膚を枕に押し付けています。また、高めの枕で寝ると首が前傾になっています。
こうして、皮膚についた癖がシワになることも考えられますが、ずっとあおむけで寝るわけにもいきません。大切なのは、長時間同じ体勢を続けないこと。適度に寝返りをうてる、自分に合った寝具なのか見直してみては。
枕カバーは、肌に刺激が少なく、吸湿性の良い自然素材のものを。化学繊維は、摩擦を生じて皮膚の乾燥や炎症につながることもあるのでおすすめしません」(新井さん)
歯ぎしりや食いしばりが、シワを生む原因になることもあると教えてくれたのは、リモデンタルクリニック院長で歯科医師の小川智功さん。
「上下の歯は、普段は離れていて、接触するのは食事や会話、飲み込む動作などをした瞬間だけ。歯の接触時間は健康な方で1日平均17分程度といわれています。しかし、歯ぎしりや食いしばりをすると、長時間歯が接触することで、すり減って、かみ合わせ位置が変わってしまいます。そうなるとそしゃくするために使う筋肉のバランスが悪くなったり、そしゃくそのものがおっくうになり回数が減ることも。このことで、そしゃく筋が衰えてほうれい線が深くなるケースもあるんです」
「画面を見る前傾姿勢は、首の筋肉を収縮させます。筋肉と薄い膜でつながっている皮膚も引っ張られていますから、長時間、その姿勢を持続すれば横ジワができることもありえます」と新井さん。
パソコン操作をしているときの“無表情の状態”もシワの原因になるとか。
「一定の時間、筋肉が使われていないということは、血液やリンパの流れが滞って皮下や筋肉にむくみやコリが生じ、筋肉が収縮した状態が続いているということ。そうすると皮膚も引っ張られて、シワができる可能性もあります。
また、加齢とともに、皮膚を支える筋肉の力が弱まり、重力の影響を受けやすくなってたるみます。これがよく分かるのがほうれい線。筋力アップのためにも、表情筋はある程度動かしましょう。ただし無理に大きく動かそうとすると、コラーゲンやエラスチンを損傷することもあるのでやり過ぎは禁物です」
眉間にできる表情ジワがいつの間にか深く刻まれたままになることも。どんなときにシワを寄せることがあるのか、同志社大学心理学部助教の菊谷まり子さんに聞きました。
「眉間にシワを寄せる気持ちとしては〝嫌悪〟を表しているとされます。気持ち悪いものや道徳に反するものを見てしまったときの感情です。ですが、表情が顔に表れるのは自然なこと。やめようとすると、逆にストレスになります。ただし、その気持ちを引きずったり、思い出したりすると表情にでることも。気分転換して気持ちを切り替えて」
見えづらいときなどに、目を細めても眉間にシワができますね。
水野眼科院長の水野秀信さんによると、「それはピントを合わせようとしているため。メガネやコンタクトが合っていなかったり、目が疲れているのかもしれません。例えば、パソコンは1時間に1回、スマートフォンなら20~30分に1回は休憩をはさみましょう」
まぶたを支える上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)が緩み、まぶたが下がる眼瞼下垂(がんけんかすい)という病気が原因ということも。
「視界がまぶたで遮られて見えにくくなると、眉やおでこを上げて見ようとします。このとき、眉間にシワがよることもあります。この病気の主な原因は加齢ですが、アイメイクを落とすときにこすったり、コンタクトがまぶたの内側にすれるなど、長期間の動作で徐々に筋肉を弱めていることもあるといわれています」
「こすらない、たたかない、引っ張らない。刺激しないことが大切です」と新井さん。
「化粧水や乳液などを塗るときには、手のひら全体を使って、肌に優しくなじませるように。アイクリームも円を描くように塗るのはNG。まぶたの皮膚はとても薄くてデリケート。指の腹でそっとおくようになじませてください」
シワにクリームを塗りこむことも良くないそう。
「さすって伸ばしたりするのも控えて。コラーゲンの繊維が損傷したり、皮膚と筋肉をつなぐ膜が緩んでシワの原因になります。正しいマッサージやストレッチは血液やリンパの流れを改善し、シワの予防になると考えられますが、皮膚にはできるだけ負担をかけないようにしましょう」
同志社大学心理学部助教の菊谷まり子さん
「私たちは、他人の表情やしぐさ、声のトーンといった多様な情報を包括的に分析してその人の印象を判断しています。顔の細かいシワなどは、自分が気にしているほど人は気になっていないものですよ」
リモデンタルクリニック院長・歯科医師の小川智功さん
「歯ぎしり、食いしばりは無意識に行うクセのひとつ。〝しないように意識する〟ことが一番の治療法ですが、かむ筋肉を鍛え過ぎる歯応えのある物を口にすることを避けたり、食事の際は、回数を多く、左右均等に時間をかけて、軽くかむように心がけるのもよいといわれています」
水野眼科院長・眼科医の水野秀信さん
「パソコンは40~50センチ程度離れて、やや下で見るようにしてください。目がショボショボする、ピントが合いにくいなと思ったら疲れ目のサインです」
表情筋のエクササイズの指導などをしているクリア・デザインの小野川さんに、シワ対策になる顔の体操を教えてもらいました。「どのストレッチも、鏡の前で背筋を伸ばして、動きを確認しながら行ってください。鏡が顔の正面にくるようにし、下を向かないように。回数を増やすよりも、1回1回を正しい形で行うことが大切です」
おでこから目の下あたりを動かします
※1日5~10回
口の周りや頬のあたりを動かします ※1日3回