寺院の庭などでよく見かけるコケ。今の時期は、木々の緑色とあいまって爽やかさが増しますね。そして、また違った趣を感じられるのが、緑が一層濃く見える雨の日。そんな日にコケ観賞に出かけるのもいいのでは。
境内にいくつもの庭がある青蓮院門跡。京都市の天然記念物でもある大クスノキの木陰にコケが広がる宸殿(しんでん)前の庭や、青モミジとコケの“共演”を楽しめる小堀遠州作と伝わる「霧島の庭」などがおすすめポイントです。建物の中からゆったりと眺めた後は、庭を散策しながらコケを間近に感じるのもいいですね。
小野小町ゆかりの寺院として知られる隨心院門跡は、コケの庭が美しく「洛巽(=都の東南)の苔寺」と呼ばれているそう。宸殿造りの本堂の前の庭のほか、境内に点在する中庭の地面にも青々としたコケが。参拝順路に沿って廊下を歩いているとき、庭にも目を向けてみて。
小倉山のふもとにある常寂光寺の仁王門をくぐると目に入るのが、山肌を覆う一面のコケ。見上げると青モミジというすがすがしい空間です。緑が包む階段を中腹にある本堂(現在は工事中)のあたりまで進めば、今度は視界が開けて京都市内を見渡せる展望スポットも。こちらも爽やかな景色ですよ。
三千院門跡があるのは、大原の自然の中。宸殿から往生極楽院に通じる庭園・有清園には、スギやヒノキの木立の下にコケが生い茂り、緑のじゅうたんのよう。往生極楽院を過ぎた所には、コケの上に小さな「わらべ地蔵」が。手を合わせたり、寝転んでいたり。その柔らかな表情に心が穏やかになりそうです。