「痩せようと思ったら、栄養バランスを考えながら、1日の摂取エネルギーが基礎代謝量を上回らないようにするのがポイント」と、浅原さん。
「『そんなに食べてない』という人も、実際に食事内容を記録すると食べ過ぎに気付くケースが多いんです。女性に特に多いのが、3度の食事以外に間食や夜食、食後などに甘いものを食べること。子どもの食べ残しなどを『もったいない』、時間が空くと『口寂しい』と、食欲がないのに食べてしまう“代理摂食”も目立ちます」
食べる回数が多くなれば、それだけ摂取エネルギーも増加。中でもケーキや菓子パンは1食分に匹敵するほどの高カロリーなので、注意が必要とのことです。
また、同センターの栄養管理室長・西田博樹さんからは“食べ方”について指摘がありました。
「肥満傾向の人は、丼もの、カレー、麺類を好み、日常的にもよく食べているという特徴が見られます。これらのメニューの共通点は、早食いになりやすい、よくかまなくても食べられること。そうすると満腹サインが脳に伝わりにくくなるので、つい食べ過ぎてしまいがちに」
さらに浅原さんも、「まずは、記録するなどして自分の食生活を客観的に把握することが大切。問題点が認識できれば、改善すべきポイントや自分に合った摂取エネルギーのコントロール法も見えてきます。そして重要なのは結果をあせらず、無理なく長期で取り組むことです。1カ月1kgでも、1年かければ12kgの減量になりますよ」
「今の日本は食生活が豊かで、飽食の時代ともいわれています。しかし、摂取エネルギーは約1900キロカロリーで、戦後間もない1946年とほぼ同じなんですよ」と、森谷さん。
「インが増えていないにも関わらず、肥満に悩む人が増加。約70年前との大きな違いの一つが、日常の活動量なんです」
住宅の欧米化、移動手段の発達などにより、立ち上がる、歩く、階段を昇り降りするといった動作が減少。消費エネルギーも減ったことで、肥満の増加を招くことになっているのだとか。
「日常活動による消費エネルギーは『ニート(NEAT:非運動性熱産生)』と言います。ひとつひとつのニートは少ないのですが、積み重ねればスポーツやエクササイズに相当する効果が期待できます」
例えば、座っているときと比べて、立つと1.2倍、歩くと3倍、階段を昇り降りすると8倍を消費。
「ニートを増やすポイントは、家の中でこまめに動く、積極的に階段を使う、車や電車での移動を控えるなど、あえて不便を選び、無駄に動くこと。実際に女子学生で計測したところ、常にちょこまか動くタイプと、そうでない学生との差は1日500キロカロリー。体重に換算すると1年で25kgの違いが生じるんです」
“ちょこまか運動”なら、体力に自身がない人や、運動が苦手な人でも、取り組めそうですね。
摂取エネルギーに比べ、消費エネルギーは年齢や体格、活動量などによって個人差があり、把握しづらいもの。
「歩数から消費エネルギーを計測する歩数計もありますが、洗濯や掃除、デスクワークといった日常活動は反映されにくいんです。それらも含めた消費量が数値化できれば、自分に応じた活動量と摂取量の目安になり、体重もコントロールしやすくなります」と、オムロン ヘルスケア 商品開発統轄部の北村優美(ゆみ)さん。北村さんは、ポケットやカバンに入れても活動量、消費エネルギーなどが計測できる活動量計の開発担当者。
「家事を頑張ったり、こまめに動いたり。日頃は見えにくい〝プチ努力〟を〝見える化〟することで、体を動かす楽しみが増し、ダイエットを続けるモチベーションアップにもつながります」